ゲームと現実の奇妙な類似...コロナ禍の世界に『デス・ストランディング』が教えること
The Real-life Lessons of “Death Stranding”
配達人のサムは訪れた町を通信網につなぎつつアメリ救出を目指す SONY INTERACTIVE ENTERTAINMENT/KOJIMA PRODUCTIONS–SLATE
<人気ビデオゲーム『デス・ストランディング』は、新型コロナで分断された現実世界の住民たちに、人と人がネットワークでつながることの意味を問い掛ける>
人気ビデオゲーム『デス・ストランディング』(コジマプロダクション制作)を友人から勧められたのは昨年秋のこと。高速通信網の整備に650億ドルを投資することなどを定めたインフラ投資法案がアメリカ連邦議会で可決・成立したのと同じ頃だった。
プレーを始めてから数分で、私好みのゲームではないことに気付いた。没入感が強すぎたし、大型モンスターや殺し屋の類いがそこらじゅうをうろうろしているのも気に入らなかった。その一方で、誰もがインターネットを使える「ユニバーサルアクセス」の実現を目指して働いている筆者にとって興味深い部分が数多くあった。
このゲームが発売されたのはコロナ禍が始まる前の2019年11月だが、パンデミックとそれに伴う都市封鎖によって、現実の世界とゲーム世界の間に類似点がいくつも生まれた。そこから、ネットワーク通信の本質が見えてくる。『デス・ストランディング』制作者の小島秀夫は、つながることの大切さがこのゲームのメインテーマの1つだと繰り返し語っている。
この春、新たに拡張要素を加えたPC版の『デス・ストランディング ディレクターズカット』が発売された。米政府が高速通信整備費の分配計画を策定している今、あらゆる人が高速インターネットに接続できることの大切さをこのゲームを通して考えてみたい。
怪現象で荒廃した近未来のアメリカが舞台
『デス・ストランディング』の舞台は近未来のアメリカだ。恐るべき怪現象のせいで世界は荒廃し、外を出歩くのは非常に危険になっている。主人公サムは危険を冒しつつも離れた場所にいる人に荷物を届ける「配達人」だ。義理の母である大統領とその娘アメリから、キューピッドと呼ばれる特殊装置を用いて全米各地の町を通信ネットワークにつなぐよう依頼される。
ゲーム内でも過去2年間の現実世界でも、外に出て他の人々とじかに会うことは命の危険を伴う。そうした状況下では、ネットワーク通信にアクセスできるかどうかが非常に重要になってくる。現実世界においてインターネットは、人々が他人と距離を取りつつリモートで仕事を続け、学校の授業を受け、国からの支援金を受け取り、医師の診察を受けるのに欠かせないツールであり続けている。
そして『デス・ストランディング』から分かるのは、ネットへのアクセスを広げることの重要性だ。この世界では怪現象が起きたことで橋や道路といった基本インフラが破壊され、人々は分断され孤立している。