最新記事

ゲーム

ゲームと現実の奇妙な類似...コロナ禍の世界に『デス・ストランディング』が教えること

The Real-life Lessons of “Death Stranding”

2022年4月15日(金)17時17分
クレア・パーク(ニューアメリカ財団オープン・テクノロジー研究所プログラムアソシエート)

だが主人公が各地の端末を通信ネットワークにつなぐと、大きなデータのやりとりが可能になる。すると道具や機器の設計図が手に入るようになり、シェルターや発電機、橋といった必需品を造れるようになるのだ。

町から町へ渡り歩く主人公の旅は苦難に満ちているが、これは現実世界で高速通信を使えない人々の抱える問題と相通じるものがある。

『デス・ストランディング』の世界では、悪路で荷物を運ぶための工夫が常に求められるし、有毒な雨やモンスターや過激派に遭遇しないよう常に気を配らなければならない。ネットワークにつながっていない地域では道具や設備を作れないため旅はさらに困難になり、いかに早く次の端末にたどり着いてネットワークにつながるかが課題となる。

つながることで利益が得られる点は現実世界の高速通信も同じだ。例えばノースカロライナ州の小さな町では、自治体が運営する高速通信網のおかげで住民はリモートで働く職を得ることができ、ネットは人々の暮らしの安全性向上にも一役買っている。

ところが通信大手は、自治体が新たな通信ネットワークを自ら運営することに反対するロビー活動を展開。そのせいでこの町の住民たちもネットを使えない時期があった。

ネットの有無が生み出す不平等

ネットが使えなければ、もともと存在するリソースや機会の不平等はさらにひどくなる。例えば黒人やヒスパニックが多く住む地域で自宅からインターネットを使える住民の割合は、収入格差を勘案しても白人が多い地域より低い。

アメリカ先住民が暮らす居留地では特に、デジタル格差が深刻な問題となっている。自宅に固定のインターネット回線を引いている住民は全体の49%にすぎない。そうでなくとも彼らは社会の周縁に追いやられ、財務記録に基づく信用履歴の判定や住宅購入、ネットワークインフラの整備といった面でも差別に苦しんできた。

さて、『デス・ストランディング』の世界に存在する通信ネットワークは連邦政府が運営するものだけだ。それを拡張する使命を担うのは主人公(つまりプレーヤー)1人であり、こうした状況では利潤よりも公共の利益を優先することが可能となる。現実世界で自治体が運営している通信網にも同じことが言える。

だがその恩恵に浴しているのは、アメリカ人のほんの一部にすぎない。残る大多数の人々にとっては、少数の大手民間企業による寡占状態が続く高速通信サービス以外の選択肢はない。この市場における競争は非常に限定的で、企業が個人ユーザーよりずっと強い立場に立っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オープンAIが1100億ドル調達、アマゾンやソフト

ビジネス

独CPI、2月は2.0%上昇に鈍化 エネ価格下落で

ワールド

クリントン元米大統領、エプスタイン氏の犯罪「全く知

ワールド

海運大手マースク、スエズ運河から迂回 紅海周辺情勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石が発見される...ほかの恐竜にない「特徴」とは
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    習近平による軍部粛清は「自傷行為」...最高幹部解任…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中