最新記事

エネルギー

「日本を産油国に」と宣言して顰蹙かった藻類バイオマスエネルギー 今、再び注目される3つの理由

2022年4月2日(土)11時40分
渡邉 信(筑波大学 生命環境系 研究フェロー、MoBiolテクノロジーズ会長) *PRESIDENT Onlineからの転載

実証実験が行われた茨城県・小貝川浄化センター

実証実験が行われた茨城県・小貝川浄化センター 写真=渡邉信研究室

1億3600万トンの原油を生産可能

その結果、日本全国に点在する下水処理場の3分の1で藻類が育てられ、原油生産を始めたとすれば、現在の日本の年間の原油輸入量1億3600万トンと同じ量の原油を藻によって生むことができるということがわかったのです。

私は、10年前、「日本を産油国にする」と言って、さんざん顰蹙(ひんしゅく)をかいましたが、そのポテンシャルはあることは証明されたわけです。日本の石油精製会社はどんな質の原油からも運輸燃料を精製できる技術を持っています。あとは、石油より安く生産できるようになればいいわけです。

水熱液化(HTL)によるバイオ原油変換

全国の下水処理場の3分の1で藻類を育てれば、日本の原油年間輸入量1億3000万トンが藻によって産出できるという(図表提供=渡邉信研究室)

下水処理場ではさらに高深度での培養に耐える藻があれば、処理場の面積は少なくなるわけで、効率はよくなります。最も効率的な藻の組み合わせをこれからも引き続き研究していきます。

下水事業者たちとの具体的なやりとりが始まり、産官学が同席する勉強会も開いています。下水関係者が"この技術は大きなイノベーションで、まったく新たな利益を生むものだ"と理解してくれることがいちばん重要なのです。そこが動いて、石油精製会社が協力してくれて、安いバイオエネルギーが生まれ出したら、みんな買ってくれるようになりますし、また下水処理場は各地域にありますので、地域活性をもたらすことになるはずです。

この先は、この新技術がどう評価され、実際にどう動いていくのか、さらには何兆円という価値がどう分配されていくかという話になってくるでしょう。実際に藻類バイオ原油由来のジェット燃料や原油由来製品が提供される日はそう遠くない、私はそう信じています。

(構成=一志治夫)

渡邉 信(わたなべ・まこと)

筑波大学 生命環境系 研究フェロー、MoBiolテクノロジーズ会長
1948年宮城県生まれ。71年東北大学理学部生物学科卒業。北海道大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。国立環境研究所生物圏環境部長、筑波大学生命環境科学研究科教授などを経て、現在、筑波大学の研究フェローとして、主に藻類のバイオマスエネルギー化の研究に従事。MoBiol藻類研究所社長、MoBiolテクノロジーズ会長として実用化に向けて研究開発を続けている。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

情報BOX:トランプ大統領の「平和評議会」、どの国

ビジネス

食料品消費税ゼロを今秋実施、自民減税はいつか分から

ワールド

ローマ教皇も招請、トランプ氏提唱の平和評議会=バチ

ビジネス

激動の第2次トランプ政権、1年目のロビー活動収入が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中