最新記事

歴史

1500人の女性を囲い17人に子ども54人を産ませた「好色将軍」徳川家斉が実子を増やし続けた理由とは

2022年4月22日(金)17時27分
河合 敦(歴史研究家・歴史作家) *PRESIDENT Onlineからの転載

怒涛の養子攻勢で、血が途絶えてしまった家も......

books20220422.pngそのため、家斉の養子押し付けを巡って、さまざまなトラブルが発生する。

たとえば、福井藩である。藩主・松平斉承は、家斉の二十一子・浅姫を嫁にもらい、2人の間には男の子が生まれるが、すぐに早世してしまう。浅姫には、まだ次子が生まれる可能性があったにもかかわらず、家斉は無理やり五十子・民之助を押し込んだのである。

御三家筆頭の尾張家の場合は、さらにすごい。4人も家斉の子が養子に入っているのだ。家斉は、尾張の徳川宗睦の嫡子・五郎太に長女の淑姫を輿入れさせようとした。

結婚の取り決めは姫が2歳のとき、婚約は5歳だった。けれども五郎太が幼死してしまい、婚約は解消される。が、家斉は五郎太に代わって、我が子の敬之助(六子)を宗睦の養子にしたのである。

そして敬之助が3歳で死ぬと、すでに一橋斉朝に嫁いでいた淑姫を、夫婦そろって宗睦の養子としたのである。さらに、淑姫夫妻に子がなかったことから、四十五子・直七郎を養子に入れ、その子が死ぬと今度は三十八子の斉荘を送り、尾張藩主とした。

考えられないような養子攻勢により、藩祖義直以来の尾張家の血脈は完全に絶えてしまった。

東京大学の赤門の意外な由来

reuters__20220422162807.jpg

東京大学の赤門 mizoula-iStock.

もちろん、家斉の子をもらいたいと願い出る藩もあった。将軍の養子先は、格式の高い藩と相場が決まっていた。それゆえ、小藩の場合、家斉の子を養子にすると、自動的に家格が上がり、松平姓と三ツ葉葵の紋の使用が許された。

また、徳川家から拝借金をもらうことができた。これは弱小藩にとって、最大の魅力だった。だが、大藩に関しては、かなり閉口していた様子が窺える。

将軍の子を迎えるには、用意を整えるだけで莫大な費用がかかる。たとえば姫路藩などは、家斉の四十五子を嫁に迎えることで、財政が悪化したという。そういう意味では、大大名の力をそぐ効果もあったわけだ。

ちなみに、現在東京大学にそびえ立っている赤門は、元加賀藩の屋敷門で、前田家が家斉の二十一子をもらうにあたって、新築させたものである。

いずれにしても、家斉の子供の数とその強引な養子戦略は驚くほかはない。

河合 敦(かわい・あつし)

歴史研究家・歴史作家
1965年生まれ。東京都出身。青山学院大学文学部史学科卒業。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。多摩大学客員教授、早稲田大学非常勤講師。歴史書籍の執筆、監修のほか、講演やテレビ出演も精力的にこなす。著書に、『逆転した日本史』『禁断の江戸史』『教科書に載せたい日本史、載らない日本史』(扶桑社新書)、『渋沢栄一と岩崎弥太郎』(幻冬舎新書)、『絵画と写真で掘り起こす「オトナの日本史講座」』(祥伝社)、『最強の教訓! 日本史』(PHP文庫)、『最新の日本史』(青春新書)、『窮鼠の一矢』(新泉社)など多数
BlogTwitter


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg





今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

〔情報BOX〕米相互関税、各国首脳の反応

ビジネス

米関税で市場に動揺、貿易戦争・景気後退を懸念 「最

ワールド

訂正(3月31日配信の記事)-トランプ大統領、3期

ワールド

トランプ氏が相互関税発表、日本は24% 全ての国に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中