最新記事

ウクライナ

ロシアに苦しめられ続けた、知られざるウクライナ政治30年史

SEEKING DEMOCRACY

2022年3月30日(水)13時05分
フェルナンド・カサル・ベルトア(ノッティンガム大学准教授)、ジョルト・エニエディ(セントラル・ヨーロピアン大学教授)

結果はヤヌコビッチの勝利だった。ところが政府による不正操作があったとする抗議デモが全国で起きて、最高裁判所が選挙のやり直しを命令。

12月26日に再選挙が行われた結果、ユーシェンコが7%以上の差を付けて勝利し、大統領に就任した。この一連の出来事がオレンジ革命だ。

ウクライナの政党政治の第2期は、やはり親ロシア派と親欧米派の対立に彩られたが、この時期は3つの有力な勢力があった。

親ロシア派の中心は引き続き地域党で、2005年にプーチン率いる統一ロシアと協力合意を結んで以来、一段とロシア寄りになっていた。

一方、親欧米派は、われらウクライナを中心とする陣営と、オレンジ革命の功労者であるユリア・ティモシェンコ率いる「ティモシェンコ連合」により構成されていた。

クリミア再編の思わぬ影響

オレンジ革命が起きた2004年から2014年までのウクライナの議会選挙や大統領選の結果を見ると、2つの陣営の支持基盤は、親ロシア派は東部、親欧米派は西部というように、地理的にはっきり分かれているのが分かる。

ドンバス地方とクリミアを含む東部は、エカテリーナ2世時代にロシア帝国の支配下に入ったため、ロシア系住民が多い。

一方、西部は11~16世紀半ばまでポーランド王国の一部となり、18世紀にオーストリア=ハンガリー帝国に併合されたものの、戦間期に再び大部分がポーランド領となり、ウクライナ語話者が圧倒的に多い。

だが、そこにロシアが大きく介入してきて、ウクライナの政党政治のバランスは大きく変わっていく。

2012年の議会選挙で躍進した地域党が、共産党を誘って与党連合を形成しようとしたところ、条件として、ロシアが進めるユーラシア経済連合への参加を迫られた。

それは3年前にティモシェンコが道筋を付けた、EUとの連合協定(将来的なEU加盟を見据えた協力合意)を見送ることを意味した。

この与党連合の決定に激怒した市民は、全国で激しいデモ活動を展開。いわゆる「尊厳の革命」に発展した。

デモ隊と治安部隊の衝突が数週間にわたり続いた結果、2014年2月21日、ヤヌコビッチ大統領と野党は大統領選の早期実施と憲法改正に合意する文書に署名した。その翌日にヤヌコビッチがロシアに逃亡して政権が崩壊すると、翌月にドンバス地方で親ロシア勢力の武装蜂起が始まり、クリミアはロシアに併合された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    筋肉の「強さ」は分解から始まる...自重トレーニング…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中