最新記事

テクノロジー

米軍で活躍中の「ロボット犬」、なぜ犬型になった? 開発者が語る「能力」

The Power of the Robot Dog

2022年3月26日(土)14時43分
ギャビン・キニーリー(ゴースト・ロボティクスCOO)
ビジョン60

ビジョン60は既にフロリダの空軍基地でパトロール任務に就いている GHOST ROBOTICS

<国境警備も工場点検もできる四足歩行ロボット「ビジョン60」で起業した筆者。武器化に対する懸念もあるが、使い方は所有者次第だ>

昔からテクノロジーや機械が大好きで、ロボットコンテストに参加する一方、獣医にも憧れた。子供の頃の興味が1つになったのが、今の仕事といえる。

僕は2012年から、ペンシルベニア大学の博士課程で動物の動作をロボット工学に取り入れる研究を始めた。

研究室ではゴキブリをモデルにロボットを設計した。ゴキブリは平地でも起伏の激しい場所でも筋肉の連動性が変わらない。脚の構造が非常に精密なのだ。

だがゴキブリ系ロボットは環境への適応力が今いち。研究仲間のアビク・デーとそこを改良し、四足歩行ロボット「ミニトール」を作った。

これに目を付け声を掛けてくれたのが、起業家のジレン・パリクだった。彼は15年に僕らとゴースト・ロボティクス社を共同設立し、現在CEOを務めている。

真っ先に買ってくれたのがSEALs

ゴーストで僕とデーは四足歩行ロボット「ビジョン60」を開発した。真っ先に買ってくれたのが、SEALs(海軍特殊部隊)と連携する米海軍特殊戦コマンドだ。

ビジョン60は動きもルックスも犬に似ており、顧客も「犬」と呼んでいる。

特別なのは、モーターでじかに環境や地形を感じ取る能力だ。ビジョン60は従来のロボットに比べてモーターが大きく頑丈で、ギア比が低く加速しやすいために駆動性に優れている。そのためモーター自体が地形を検知し、砂漠でも雪原でも氷山でも沼地でも崖でも自在に移動する。

用途は2つで、1つ目は単発の偵察任務。監視部隊として派遣し、爆発物や危険な化学物質や核物質を探させる。適切なセンサーを搭載して送り出せば、その場所の特徴を調査してくれる。

2つ目はルーティンワークで、例えば産業ロボットとして工場を点検する。毎日決まったルートを巡回して計器を読み機械の温度を調べて、異常の有無をチェックするのだ。

軍や政府機関での役割は、警備の色合いが強い。フロリダのティンダル空軍基地では、既にゴーストのロボット犬が1日2回湿地をパトロールしている。人間の身元確認も、いずれ担うだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中