最新記事

ロシア

プーチンに「戦争反対」を進言するなど「自殺行為」──制裁対象のオリガルヒ

Telling Putin To End War Would be 'Suicide,' Says Russian Billionaire

2022年3月18日(金)17時40分
イワン・パーマー
プーチン大統領

Sputnik/Mikhail Klimentyev/Kremlin via REUTERS

<オリガルヒに戦争反対を進言するよう期待しても無駄。プーチンとの力の差は天文学的だと、オリガルヒのミハイル・フリードマンは語った>

プーチン政権が起こしたウクライナ侵攻のせいで、欧州連合(EU)など各国から厳しい制裁を受け、資産を凍結されるなどしているロシアの富豪たち。しかし、だからといって彼らに、戦争を止めるようウラジーミル・プーチン大統領に進言するよう期待するのは無理なようだ。そんなことをするのは「自殺行為」だと、オリガルヒの1人は語った。

ロシア最大の民間銀行「アルファ銀行」の創業者で、現在はプライベート・エクイティ・ファンド「レターワン」を経営するオリガルヒのミハイル・フリードマンは3月1日、長年のビジネスパートナーであるピョートル・アベンとともに、EUから制裁を受けた。続いて英政府も3月の第3週に、ロシアのウクライナ侵攻を受け、2人に制裁を科すと発表した。

EUは制裁を発表した際、アベンについて、クレムリンで定期的に開催される大統領との会合に参加している、プーチンに「最も近いオリガルヒ」の一人だと説明した。一方、ウクライナ出身のフリードマンは、プーチンと直接話したことはないが、ほかのビジネスリーダーたちと一緒に会合を開いたことはあると述べている。

フリードマンはブルームバーグの取材に対し、アベンとプーチンの会合の重要性を否定したうえで、オリガルヒは大統領に対する影響力を持っておらず、ウクライナ侵攻への異議を申し立てることは「絶対にない」と断言した。

「誰であれ、プーチン氏との力の差は、地球と宇宙の距離くらい離れている」とフリードマンは語った。「アベン氏は、『お時間をいただき誠にありがとうございます』という感じで近づいていただけだ。プーチン氏に戦争反対と伝えるなんて、誰にとっても自殺行為だ」

「ロシアの仕組みを理解していない」

フリードマンはまた、自身とアベンに対する制裁に正当な根拠があるとは考えていない理由を説明した。自分たちは、ウクライナでの紛争に関するプーチンの判断にいかなる影響も及ぼすことはできない、というのだ。

「もしEUの責任者が、制裁を受けたことで私がプーチン氏に連絡し、戦争をやめるように言えば聞いてもらえると信じているのだとしたら、それはわれわれ全員にとって大問題だ」と、フリードマンは言う。

「なぜなら、この決定を下している人たちが、ロシアの仕組みについて何もわかっていないことを露呈しているからだ。そして、これは将来にとって危険なことだ」

ブルームバーグによれば、ロシアがウクライナに侵攻する前、フリードマンは約140億ドル相当の資産を保有していた。制裁後、帳簿上では推定100億ドルを保有しているが、実質的に、その資産にアクセスする方法はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 9
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中