最新記事

動物園

ウクライナの動物園、動物は園外に逃げ、給餌をしていた飼育員が銃撃された

2022年3月16日(水)16時40分
松岡由希子

ウクライナ北東部ハリコフの5000匹の動物を飼育する動物公園では深刻は打撃を受けた Facebook/FeldmanEcopark

<ロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナ国内の動物園にも深刻は影響を及ぼしている......>

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、ウクライナ国内の動物園などで飼育されている動物たちにも深刻な影響を及ぼしている。

動物たちのストレスも限界に

1907年から運営されている首都キエフで唯一の大型動物園「キエフ動物園」では200種4000匹の動物が飼育されている。ロシアによる軍事侵攻に伴って、2022年2月下旬以降、閉園しているものの、約50人のスタッフが住み込み、24時間体制で動物たちの安全と健康を懸命に守り続けている。

A bunker in a birdhouse: Kyiv zoo prepares for war


園内の動物たちは別の場所に逃げたり、隠れたりすることもできない。スタッフは一部の動物を屋内の囲いや地下室に移動させて安全を確保し、獣医がそれぞれの健康や情緒の状態を注意深くモニタリングしている。
空襲警報のサイレンや爆音が一日中鳴り響き、夜間には銃声も聞こえる過酷な状況下で、動物たちのストレスは高まっている。

大きな音を嫌うアジアゾウの「ホラス」はショックを受け、鎮静剤の投与が必要となった。キツネザルの「マヤ」は過度のストレスから、生まれたばかりの赤ちゃんの育児を放棄してしまった。スタッフが「マヤ」に代わって赤ちゃんを育てている。

「キエフ動物園」では、イスラエルの「ハイファ教育動物園」から助言を得、この軍事侵攻に備えてきた。軍事侵攻前には2週間分の餌や食料、必要な資材を蓄え、3月8日にも追加の物資が届けられた。園内ではビニールハウスを設置し、葉野菜を栽培している。

動物は園外に逃げ、給餌をしていた飼育員が銃撃された

激しい戦闘が続くウクライナ北東部ハリコフでは、300種以上5000匹の動物を飼育する動物公園「フェルドマンエコパーク」が深刻な被害を受けている。囲いが破壊され、園外に逃げた動物もいる。負傷やストレスで死亡する動物も少なくない。3月7日には動物に給餌をしていた飼育員2人が銃撃され、13日にも飼育員1人が給餌中に死亡した。


動物たちをウクライナ国外に移動させる動きもある。キエフ近郊の動物保護施設「ホワイトロック・ベアシェルター」では、3月1日、ライオンやトラ、イヌ科の肉食獣リカオンなどを隣国ポーランド西部の「ポズナン動物園」へと送り出した。

その後、ライオン4頭とリカオン1匹はスペインに、ライオン2頭はベルギーに送り届けられている。「ポズナン動物園」では、3月11日、フェイスブックに動画を投稿し、キエフから救出されたトラの赤ちゃんの様子を伝えた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国百度、7─9月期の売上高3%減 広告収入振るわ

ワールド

ロシア発射ミサイルは新型中距離弾道弾、初の実戦使用

ビジネス

米電力業界、次期政権にインフレ抑制法の税制優遇策存

ワールド

EU加盟国、トランプ次期米政権が新関税発動なら協調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中