最新記事

ウクライナ危機

「次の瞬間に何が起きるか...」 爆撃に怯えるウクライナ市民から届いた「現地」の声

Under Russian Assault, Kharkiv Kids, Pets Huddle on Subway Station Floor

2022年2月25日(金)18時00分
ニック・モードワネク
ウクライナ市民

首都キエフの地下鉄駅に避難した人々 Viacheslav Ratynskyi-REUTERS

<爆撃音が響くウクライナ・ハリコフの町で、地下鉄駅に避難する市民が本誌に語った緊迫する現場の様子と、攻撃にさらされる彼らが本当に求めているもの>

ヴァレンティナ・ディロワは頭上で鳴り響く爆撃音を聞きながら、恐怖を感じつつも強い気持ちを失わずにいた。彼女は29歳のウクライナ人で、1年ほど暮らすハリコフ(ウクライナ北東部にある、首都キエフに次ぐ国内第2の都市)からメッセージアプリWhatsAppで本誌に連絡してきた。現在は、防空壕と化した地下鉄駅に避難している。

ロシア軍がウクライナに侵攻した後、ディロワを含む多くの人がこの地下鉄駅に逃げ込み、次の展開をじっと待っているという。人々は食料や水を分け合っている、とディロワは話す。「時おり」爆発音が聞こえてくる。人々は毛布で寒さをしのいでいる。

「私は一人ではない」とディロワは本誌に語った。「私は夫と一緒で、ほかにも数百人が避難し、爆撃に備えている。ロシア軍による次の攻撃のことだ。ペットを連れている人もいれば、子供や幼児と床に寝転んでいる人もいる」

「彼らはここで眠っている。眠ろうと頑張っている人もいる。力強さを維持しようとしている人もいる。コミュニケーションを取り、友達になり、懸命に励まし合っている人たちもいる」とディロワは続ける。

これからどうするのか、それはまだ決まっていない。とりあえずディロワは、今いる場所に周囲の人々と一緒にとどまるつもりのようだ。「あなたは眠れているのか」と質問したところ、眠ろうとしているが、体が眠らせてくれないという答えが返ってきた。

「いつ終わるのかさえ分からない」

「現時点で最も安全な場所は地下だ。いま外に出るのは安全ではない。公式ニュースやロシア国境付近の状況を見る限り、彼らはクリミアへと続く陸路をつくりたがっているようだ。彼らはクリミアを侵略し、その動きをエスカレートさせてきた」とディロワは語る。

ディロワは英語教師で、ウクライナ南東部のメリトポリやザポリージャからほど近いヤキミフカという村の出身だ。彼女自身は、周囲で死傷者が出たなどの情報は聞いていないと話す。

「人々に支えられていることを実感している」とディロワは話す。「最も恐ろしいのは、次の瞬間に何が起きるか、いつ終わるかさえわからないことだ」耳にする情報を鵜吞みにすることもできない、とディロワは感じている。正確な情報を得るのが難しく、意図的に間違った情報が流されている可能性もあるためだ。

ディロワによれば、10歳の弟と両親は、ウクライナ南部のロシア国境から近い場所にいる。「彼らは現在の状況を間近で体験しており」、ロシア軍がいる地域からも距離が近いため、積極的に連絡を取るようにしてきたという。最近では10歳の弟と話すことができたが、弟は「死にたくない」と言い、おびた状態だったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米8月小売売上高0.6%増、3カ月連続増で予想上回

ビジネス

米8月製造業生産0.2%上昇、予想上回る 自動車・

ワールド

EU、新たな対ロ制裁提示延期へ トランプ政権要求に

ワールド

トランプ氏、「TikTok米事業に大型買い手」 詳
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 8
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 9
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中