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新型コロナウイルス

英女王のコロナ感染でイングランドの規制全廃めぐる戦いが再燃

How Queen Elizabeth II's Positive COVID Test Became a Political Battlefield

2022年2月22日(火)20時13分
ジャック・ロイストン
エリザベス女王

夫・フィリップ殿下の葬儀でも社会的距離を守っていたエリザベス女王(2021年4月17日) Yui Mok/REUTERS

<女王でさえ感染を避けられないのに規制を全廃するのは是か否か。24日から陽性者の隔離もやめるというジョンソン政権の政策が再び戦場に>

イギリスのエリザベス女王は、新型コロナウイルスの検査で陽性が確認された。感染判明後も軽い公務を続ける意向だが、女王が感染したという知らせは、24日にイングランドのコロナ関連規制を全廃するジョンソン政権の方針をめぐる論争を再燃させた。

現在95歳の女王は、軽い風邪のような症状が出ている中でも公務を続け、自らの行動で模範を示した。

女王の姿勢は、イギリス政府が同国全土に向けて発しているメッセージとも呼応する。政府は、イギリスが「living with COVID(新型コロナウイルス感染症との共存)」と呼ばれる、規制のない新たな段階に入らなければならないと呼びかけている。

この政策が実施されれば、新型コロナウイルスの検査で陽性が判明しても隔離されなくなる。

しかしながら、女王のコロナ感染は瞬く間に、賛成派と反対派の両方を巻き込んだ「ロックダウンをめぐる戦場」と化した。規制全廃に反対している人たちにとっては、自らの主張を裏付ける格好のニュースでもある。

女王感染の意味を巡り真っ二つ

米国シカゴ生まれで現在はイギリスを拠点とする作家ボニー・グリアは、ツイッターでこう述べている。「これは驚いた。行動規制が緩和されつつあるのは、コロナが終わったからだったはずなのに、女王が感染するなんて。ボリス・ジョンソン首相を官邸から叩き出せ」

一方、デイリー・メール紙のコラムニスト、アンドリュー・ピアースはこう書いている。「イギリスに住む者の中でも、最も厳重に守られているはずの女王が新型コロナウイルスに感染するとしたら、どんなに規制してもオミクロン株は止まらないのでは」

2月21日付のデイリー・メール紙の一面には、「新型コロナ感染に対する女王の姿勢は、国民すべてへの模範」という見出しが躍った。

イギリスの各メディアは、感染が判明しながらも女王がイギリスの冬季オリンピック・チームに贈った祝福メッセージも盛んに引用した。以下のような内容だ。「昨日(2月19日)の男子カーリング・チームの銀メダルに続き、女子カーリング・チームが金メダルを獲得したことを、心から祝福します」

だが、女王の感染を、政府の政策転換によってイギリス全土の高齢者に突きつけられた危険の象徴だと受け止める人たちもいる。

著述家で活動家のショーラ・モス=ショグバミムは、ツイッターにこう書いた。「その1:女王が新型コロナウイルス検査で陽性と確認された。女王の素早い回復を祈ると共に、『軽い公務』が重症化や感染拡大を防ぐための自主隔離の意味であることを願う」

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