最新記事

北京五輪

中国共産党が五輪で手に入れたアメリカ育ちの広告塔アイリーン・グー(谷愛凌)の輝ける前途

U.S.-Born Eileen Gu Calls China 'Homeland' After Winning Gold in Beijing

2022年2月10日(木)19時45分
ジョン・フェン
アイリーン・グー(谷愛凌)

フリースタイルスキー女子ビッグエアで金メダルを獲得したグー Tyrone Siu-REUTERS

<中国代表として五輪に出場した選択に「満足している」と語るも米国籍を放棄したかどうかは明言せず>

北京冬季五輪のフリースタイルスキー女子ビッグエアで金メダルを獲得し、大きな注目を集めたアメリカ生まれの中国代表選手、アイリーン・グー(中国名:谷愛凌)。2月8日の表彰式の後に公表された、中国共産党で汚職摘発を担う中央規律検査委員会(CCDI)とのインタビューの中で、北京大会で「祖国」を代表できることは光栄だと語った。

グーは開幕前から既に、北京冬季五輪の「顔」として地元中国で大きな人気を集めており、中国の社会や政府に「模範的人物」として紹介されてきた。CCDIも、グー(現在18歳)との独占インタビューの中で、彼女を「中国で最も人気の高いアスリートの一人」と称した。

中国人の母とアメリカ人の父のもと、米カリフォルニア州で生まれ育ったグーは、幼い頃からアメリカ代表として活躍する傍ら、高級ブランドのモデルも務めてきた。しかし2019年、彼女は「中国代表として競技に参加することを決めた」と発表。北京冬季五輪が近づくなか、彼女のこの決定が注目を集めたのは、スポンサー企業のレッドブルがグーについて、二重国籍を認めない中国の代表として競技に参加するために米国籍を放棄したとする内容の文章を掲載し、後にそれを削除したことがきっかけだった。

二重国籍疑惑には答えず

8日にビッグエアで初めての金メダルを獲得したグーは、その後の記者会見で何度か国籍についての質問を投げかけられたものの、明言はせず、中国代表になることを決めた理由をあれこれ詮索する懐疑派について、「無教養」で他人の気持ちを理解できない人々だと批判した。中国は彼女の勝利と会見での対応を称賛した。

CCDIとのインタビューはビッグエアの競技前に行われ、彼女が金メダルを獲得した後に公表された。この中で彼女は、2022年の北京冬季五輪で競うのが夢だったと語った。

「中国代表として競技に参加できることは、とても光栄だ」とグーは語り、夏冬の両季オリンピックを開催する初の都市となった北京について、「常に私の地元のひとつだった」と流暢な中国語で述べた。「だから故郷に帰ってきたような気分だし、ここにいる全ての人が私の家族のような感じがしている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中