最新記事

変異株

HIV患者がコロナに感染することで変異株が発生? 南ア研究チームが調査へ

2022年2月2日(水)12時16分
マスクをした女性のウォールペイントの前を歩く男性

新型コロナウイルスのオミクロン株を世界で初めて報告した南アフリカのゲノム監視ネットワーク(NGS-SA)研究チームが、新型コロナウイルスとエイズウイルス(HIV)を併行して研究することで両者の関係性を調査しようとしている。同国のソウェトで同日撮影(2022年 ロイター/Siphiwe Sibeko)

新型コロナウイルスオミクロン株を世界で初めて報告した南アフリカのゲノム監視ネットワーク(NGS-SA)研究チームが、新型コロナウイルスとエイズウイルス(HIV)を併行して研究することで両者の関係性を調査しようとしている。HIV感染者が新型コロナウイルスに感染することで、新たな変異株が生まれる可能性を示唆する材料が幾つか出てきたことが背景にあるという。

研究チームは、HIVに感染しているのに治療を受けていない患者が新型コロナウイルスにも感染した場合に何が起きるのかを系統的に調べる時期が到来したとの考えを示した。

同チームが先週発表した論文をはじめとする複数の研究結果からは、HIVに感染しているのに治療を受けていないといった免疫機能が弱まっている人が、新型コロナウイルスに感染すると症状が長引く可能性があり、何か月も続くことも多いことが示された。新型コロナウイルスがそうした間に変異を重ね、一部では何らかの強みを得ることが考えられるという。

何人かの研究者は、オミクロン株や他の幾つかの変異株はこうして形成された可能性があるとみている。

先週の同チーム論文の筆頭執筆者でステレンボッシュ大学に在籍するトンガイ・マポンガ氏はロイターに、こうした仮説を裏付けるためのより本格的な調査に向けて自分や他のチームメンバーが話し合っていると語った。

同氏は、これまで研究されてきた事例はまだ少なく、いずれも系統だった研究で説明されてはいなかったと指摘。「しかし、われわれは間もなく、そうした深刻な免疫機能不全のHIV患者の身に何が起きるかを特に見極めるためのよりシステマティックな研究をすることになる」と語った。

マポンガ氏によると、今後の調査で焦点になるのは、1つにはHIV患者についてと、その免疫システムが新型コロナウイルスの感染とどう関わるのかについてで、2つめは新たなコロナ変異株がこの過程で形成される可能性が大きいことの証拠を見いだせるかだという。「仮説が正しいということになれば、われわれはそうした患者の診察方法を抜本的に見直し、患者が適切な診察と治療の道を受けられるのを確かにする必要がある」と強調した。

南アは世界で最大のHIV流行国で、感染者は820万人に上るとされる。一方で治療は遅れており、成人の約71%、子どもの45%しか治療を受けられていない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相次ぐ、「一生このまま」と医師
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で...批判噴出


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中