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「東京五輪の失敗を今こそ思い出せ!」 2030札幌五輪を阻止するために今やるべきこと

2022年2月19日(土)18時45分
平尾 剛(神戸親和女子大教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

招致が決まり、開催に向けての準備が始まればおのずと「どうせやるなら派」は形成される。ひとたび形成されれば集合的無意識は増幅され、開催への気運はおのずと高まってゆく。だから初期段階でその芽を摘む。くさびを打つ。どうせやるならという刹那的な思考が芽生える隙をつくらない。そうすれば気運そのものは醸成されない。

だから、招致が決まる前のいまこそ声を上げるときである。

反対の意思表明は決して今からでも早すぎることはない

札幌招致をもくろむ冬季オリンピックは、いまから8年後の2030年開催である。まだ8年もあるとのんびり構えてなどいられない。招致が検討されている段階で反対の意思を表明しなければならない。

札幌市は招致に向けた住民意向調査を3月までに行うとしている。開催都市の札幌市民だけでなく、開催が広域にわたることから北海道民も対象に含まれるこの調査は、開催側に直接NOを突きつける格好の機会である。札幌市は調査結果だけで開催の是非を決めない方針を固めてはいるものの、もし大多数が反対すればその意思を無視できないはずだ。2015年にはアメリカのボストンが2024年夏季大会を、2018年にはカナダのカルガリーが2026年冬季大会を、住民投票によって大会招致から撤退しているのだ。

もしオリンピックに反対するのであれば、道民はその意思を表明してほしい。

道民以外であっても意思を表明する方法はいくつもある。

地元の地方政治家に直談判する。パブリックコメント制度を利用する。SNSを通じて発信を繰り返したり、日常会話のなかで話題にするのも長い目で見れば効果はある。もちろん反対デモに参加するのもいい。

一人ひとりの小さな声が集まって世論は形成される。意思を明確にしない沈黙は賛意でしかない。

東京五輪は日本人「みんな」で招致したわけではない

映画監督の河瀨直美氏は、昨年末に放送されたNHKの番組のなかで「日本に国際社会からオリンピックを7年前に招致したのは私たち」であり、「(開催決定を)喜んだし、ここ数年の状況をみんな喜んだはず」と口にした。

この「私たち」や「みんな」には、なれなれしく肩に手を回してくるような、ぬめりのある暴力性が潜む。昨年の東京五輪を、力づくで成功したことにしようとする権力側の恣意(しい)がまとわりついている。もしあなたにオリンピックに反対する意思があり、「この手」に抱き込まれるのに抵抗を覚えるのであれば、それを内に秘めるのではなく広く公に知らしめてほしい。

札幌五輪の概要案を一読すれば、オリンピックを、人々の力を結集して社会に健康と活力をもたらす絶好の機会だと捉える考えが読み取れる。SDGsの目標年である2030年にかこつけて、その先の未来を展望する大会にするというビジョンも、具体性に欠ける。既存の施設を利用することで施設整備費を、原則的に税金を投入しない計画で大会運営費を抑える旨が記されているが、これが絵空事にすぎないことは先の東京五輪を振り返れば明らかである。

商業主義にまみれたオリンピックはすでに「平和の祭典」という存在意義を失っている。

そんなオリンピックなんか、もういらない。

平尾 剛(ひらお・つよし)

神戸親和女子大教授
1975年、大阪府生まれ。専門はスポーツ教育学、身体論。元ラグビー日本代表。現在は、京都新聞、みんなのミシマガジンにてコラムを連載し、WOWOWで欧州6カ国対抗(シックス・ネーションズ)の解説者を務める。著書・監修に『合気道とラグビーを貫くもの』(朝日新書)、『ぼくらの身体修行論』(朝日文庫)、『近くて遠いこの身体』(ミシマ社)、『たのしいうんどう』(朝日新聞出版)、『脱・筋トレ思考』(ミシマ社)がある。Blog / Twitter


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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