最新記事

オリンピック

「東京五輪の失敗を今こそ思い出せ!」 2030札幌五輪を阻止するために今やるべきこと

2022年2月19日(土)18時45分
平尾 剛(神戸親和女子大教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

アスリートも東北復興もないがしろにされ、検証も未完

また、アスリートが最優先でなかったことは酷暑下での開催が物語っている。

テニスの男子シングルスに出場したROC(ロシア・オリンピック委員会)のダニル・メドベージェフ選手は「今までで最悪な暑さ」だと不満を口にした。トライアスロン男子で優勝したノルウェーのクリスティアン・ブルンメンフェルト選手は、ゴール直後に倒れこみ、嘔吐(おうと)した。アーチェリー女子に出場したROCのスベトラーナ・ゴムボエワ選手に至っては、気を失って倒れ、のちに熱中症と診断された。

日本の夏が、アスリートがパフォーマンスを最大限に発揮するのに最適な時期であるはずがない。にもかかわらずこの時期での開催に至ったのは、放映権を保有するNBCへの配慮だったといわれている。つまりファーストだったのはアスリートではなく、「マネー」だった。

そしてなにより「復興五輪」が最も罪深い。関連工事が東京に集中したことで建築資材や人件費が高騰し、作業員の確保もままならずかえって復興の妨げとなったからだ。一橋大学名誉教授の鵜飼哲氏は、この現実をふまえて「復興妨害五輪」だったと正しく指摘している。被災地に暮らす人々に希望を抱かせておきながら、すぐさまそれを打ち砕いた罪は相当に重い。

これらを総括することなく再び招致を試みるのは、愚の骨頂でしかない。

中途半端な「外交ボイコット」で開催にひた走る北京五輪

にわかには信じ難い不祥事や不誠実な言動が明るみに出ても、いったん招致が決まればオリンピックは開催へとこぎ着ける。まるでブレーキが壊れた自動車のようにひた走る。

4日の開会式に先駆けて既に一部競技が始まった北京冬季五輪もそうだった。

開催前の昨年11月には、中国トップテニス選手の彭帥選手が中国共産党幹部からの性的強要を告白し、その後、消息不明となった。これを受けて、「ぼったくり男爵」ことIOCバッハ会長は本人とテレビ電話で対話し、その身の安全を確認したと発表した。

だが依然として周囲の状況など不明な点は多く、人権侵害への懸念は払拭されていないという見方がいまも残る。新疆ウイグル自治区のイスラム系少数民族ウイグル族および香港民主化運動への弾圧も問題視されており、著しく人権を軽視する中国は世界各国から厳しい批判を浴びている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、欧州PMIでユーロ一

ワールド

アングル:米政権の長射程兵器攻撃容認、背景に北朝鮮

ワールド

11月インドPMI、サービスが3カ月ぶり高水準 コ

ビジネス

S&P、アダニ・グループ3社の見通し引き下げ 米で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中