レバノンの特権階級は経済危機を否認して国を潰しつつある、と世銀が警告
Lebanese Elite at Fault for Country’s Poverty, and Doing Little to Fix Problem
レバノン南部の村で、暖を取るための薪木を運ぶ親子 Aziz Taher-REUTERS
<金融危機から2年、人口の75%が貧困に落ち、通貨価値は90%下落、インフレ率は145%という国民の苦しみは、特権階級による人災だ>
経済が破綻し、国家の崩壊が秒読み段階に入ったレバノン。この国の政治エリートは、この危機に知らん顔を決め込んでいる、と世界銀行が最新の報告書で痛烈に批判した。
「意図的な不況を意図的に否認する(特権層の)姿勢は、経済と社会に長期に及ぶ傷をもたらしている」と、世銀のマシュレク地域局長Saroj Kumar Jhaは報道発表で語った。「レバノンが金融危機に陥ってから2年になるが、いまだに経済と金融の立て直しに向けた道筋を見いだすことすらできていない」
社会と経済の崩壊を避けたいのなら、政府は最低限、経済再生の道筋を示さなければならないと、Jhaは釘を刺した。
AP通信によれば、レバノンの経済危機が始まったのは2019年10月。以後、人口の75%が貧困層に転落した。加えて、通貨レバノン・ポンドの対ドル相場は90%超も下落。銀行は閉鎖され、再開後も外貨の引き出しが制限されるなど、人々の不安と困窮はピークに達している。
食料を買ったら家賃が払えない
世銀が発表した報告書「壮大なる否認」によれば、今やレバノンのインフレ率は145%に上り、ベネズエラ、スーダンに次いで世界第3位だ。
子供たちが栄養不良ではすまず、餓死に追い込まれる危険性もあると見て、NGOのセーブ・ザ・チルドレンはレバノン政府に国民を困窮から救うよう訴えた。
同NGOレバノン支部の責任者ジェニファー・ムーアヘッドによると、状況は悪化の一途をたどり、レバノン・ポンドの暴落にも歯止めがかからない。
「ガソリン代が高騰し、最低賃金で働いている人は、1カ月の稼ぎを注ぎ込んでも小型車を満タンにできない」と、ムーアヘッドは報道発表で現状を伝えた。「私たちが相談に乗っている親たちは、食料品を買うか、家賃や電気代を払うか、医療費を捻出するか、それとも子供の教育費が先か、わずかな金のやりくりに日々頭を悩ませている」
ロイターの報道によれば、レバノンの経済危機の元凶は歴代の政権の放漫財政だ。膨大な公的債務を抱えたレバノンは2020年3月、デフォルト(債務不履行)に陥った。