最新記事

パンデミック

北京冬季五輪の「バブル方式」、オミクロン株出現で破裂の危機

2022年1月7日(金)11時18分

昨年秋に英国・グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)によって、大量に検査を実施すれば感染を最小限に抑えて大規模な国際的イベントを開催することができることが分かった。だが「当時流行していたのはデルタ株だった。オミクロン株のような変異株は初めてだ」という。

テスト大会は結果良好

大会組織委によると、昨年初めに海外から約2000人が参加して行ったテスト大会は、選手の中で感染者数がわずかに出ただけで、政府のコロナ感染防止策の有効性が示された。

米シンクタンク、外交問題評議会のヤンゾン・ファン上級研究員は「今回のシステムは、国民が新型コロナウイルスに接触する機会を最小限に抑えるように開発されている」と言う。

ただ、ファン氏は、オミクロン株の出現でリスクは高まっていると指摘する。中国ではほとんどの国民が新型コロナに感染しておらず、流行時に感染しやすいほか、中国製ワクチンの感染防止効果が低いことも理由だという。

中国では約85%の国民がワクチンを接種済みで、国内のボランティアなどバブル内に入る関係者約2万人も接種を終えている。しかし、国内接種の大半を占める中国医薬集団(シノファーム)と科興控股生物化学(シノバック)の国産ワクチンは臨床試験における発症予防効果が50-83.5%と、ファイザーやモデルナなど外国製の90%以上に比べて劣っている。

困難なバブル維持

東京五輪では海外からの観客の受け入れが中止されたが、北京五輪でも同様の対応が採られ、国内の観客の受け入れも制限されそうだ。

大会参加者は専用機で北京入りする前に、複数回の検査で陰性を証明することが義務付けられる。ワクチンを接種していない参加者は到着後、3週間の隔離が必要となる。また、全員が毎日検査を行う。

しかし、こうした検査を行っても、コロナが潜伏期間中であれば必ずしも感染を捕捉できない。組織委も海外から大量に人が押し寄せることを考えれば、ある程度の感染発生が予想されると認めている。

ロンドン大のピーターソン氏は「検査で感染者を除くなら、水際での実施が不可欠だ」とした。

オタゴ大のマイケル・ベーカー教授によると、さまざまな国から人が訪れ、選手やスタッフが集まれば対応が難しく、感染力が強く、潜伏期間が短いというデルタ株やオミクロン株の性質が、それに拍車を掛けると指摘。「大会期間中に感染拡大を抑え込むのは難しく、大会参加者の間で感染が広がり、さらに地域へと拡散するリスクがある」と警鐘を鳴らした。

(Gabriel Crossley記者、Martin Quin Pollard記者)


[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、欧州PMIでユーロ一

ワールド

アングル:米政権の長射程兵器攻撃容認、背景に北朝鮮

ワールド

11月インドPMI、サービスが3カ月ぶり高水準 コ

ビジネス

S&P、アダニ・グループ3社の見通し引き下げ 米で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中