最新記事

英王室

まもなくエリザベス女王在位70年に 祝賀ムードに影さす王室人気の低下

2022年1月29日(土)14時08分

一方、かつて王室内で最も人気があったヘンリー王子は、妻のメーガン妃とともに王室の責務を放棄し、ロサンゼルスに移ってしまった。王室内で何度か辛らつな悪口を言われたショックが原因だ。

チャールズ皇太子も長年の側近だったマイケル・フォーセット氏が、寄付の見返りに勲章を授与していたとされ、皇太子の慈善団体の責任者を辞任したため、厳しい目を向けられている。

ただ、王室の伝記作家、ペニー・ジュノー氏は「(これらのスキャンダルが)国民に君主制をなくすべきとの考えをもたらすだけの材料になるかどうか、私は懐疑的だ」と話した。

世論の風向き

各種世論調査では、国民の大多数が君主制は存続すべきとみている。昨年12月のある調査によると、エリザベス女王に好意的な見方をする人は83%に達した。それでも王室にとって心配な兆候も出てきている。

昨年11月にはカリブ海のバルバドスがエリザベス女王を元首とする立憲君主制を廃止し、共和制に移行。チャールズ皇太子は女王に比べて人気がなく、特に若い世代からの支持が低下しつつある。

女王が大半の時間を過ごしているウィンザーに住む学生のマルゴ・バトラーさん(20)は「私は(チャールズ皇太子が王位に就くのは)嫌な思いがする。王室全般について気掛かりはないが、皇太子は少しばかり問題がある。若い人の多くは同じ気持ちだろう」と話す。

だが、チャールズ皇太子に対する国民の気持ちが離れることや、アンドルー王子やハリー王子に関するタブロイド紙の見出しが王室の権威を低下させるというだけで、君主制がなくなることはなさそうだ。

一部の国民からすると、最近の新型コロナウイルス関連規制下でのジョンソン首相の「不行跡」や、トランプ前米大統領がもたらした騒ぎで、選挙で決まった指導者や国家元首は、人間性において君主よりも魅力が乏しく映っている。

政治・経済のエリート層の間でも、王室支持は盤石だ。与党・保守党が君主制廃止に賛同する気配は全くないし、主要野党の労働党は2019年の選挙で、元党首が愛国心に欠けると受け取られたため苦戦を強いられた。

ジョンソン氏は昨年、亡くなったフィリップ殿下をしのび、殿下は73年間女王の伴侶として君主制が国民生活の安定と幸福に不可欠な存在であり続ける手助けをしてきたと称賛した。

王室自体も、変化する世界にどのように適応していくべきか自覚している。女王は1997年の演説で、政治家は選挙を通じて国民から厳しい審判を受けるが、王室がそうしたメッセージを読み取るのはより難しいことがままあると発言。「私は結婚し、女王となってからずっとそうしたメッセージを正しく受け取るべく最善を尽くしてきた。そして、われわれ王室は将来も一体となってその努力をしていくつもりだ」と述べた。

(Ben Makori記者、Michael Holden記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・コロナ感染で男性器の「サイズが縮小」との報告が相次ぐ、「一生このまま」と医師
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で...批判噴出


女王在位70年、祝賀ムードに影落とす王室人気の低下

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中