最新記事

クーデター

ミャンマー軍、インド国境近くの住民10人を虐殺 13歳少年や記者らを後手に縛り......

2022年1月12日(水)19時08分
大塚智彦
ミャンマー国軍によって虐殺された村人たち

国軍によって虐殺された村人たち RFA Burmese / YouTube

<カンボジア首相訪問を受けて、反政府勢力に一方的な停戦を宣言していた国軍だが実態は──>

反軍政の武装市民や少数民族の武装勢力と国軍の戦闘が激化しているミャンマーで、インドと国境を接する北西部チン州の住民10人が軍兵士によって虐殺されたことが住民の証言で明らかになった。

チン州マトゥピ郡区キルン村とロンロウ村、カセ村などで1月8日、9日に相次いで住民の遺体が発見され、その多くが6日に軍兵士に連行されて行方不明になっていた住民であることがわかったという。虐殺から逃れた住民の声などを反軍政の立場をとる独立系メディア「ミッズィマ」や「イラワディ」、さらに米政府系ラジオ局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」などが伝えた。

マトゥピに駐屯する陸軍第140歩兵大隊は、2021年末からインド国境に近い集落で抵抗を続ける武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」への攻勢を強めており、PDFとは無関係の一般住民に対しても尋問、拘束、拷問、殺害が相次いでいたという。

道案内役の少年らを殺害

軍による攻撃を崖から飛び降りて逃れたという住民らの証言によると、約200人の兵士が1月5日攻撃を開始し、6日早朝にマトゥピ郡区の9つの村に次々に侵攻。住民らを拘束してそのうち数人を道案内役として軍に同行させたという。

軍はPDFやチン州の少数民族武装勢力である「チンランド防衛隊(CDF)」の待ち伏せ攻撃を避けるために主要道路を進まず、山間部の道を道案内役として強制連行した住民の案内で進んだ。

そして攻撃対象の村にたどり着くと案内役の住民はその場で殺害され、その中には13歳の少年も含まれていたという。

地元メディア編集長も虐殺の犠牲者に

報道によると地元メディア「ホア・ヌ・トゥン通信」の創業者兼編集長だったサライ・トゥイ・ディム氏も発見された10人の遺体に含まれていた。サライ氏は軍の攻撃を逃れるため国境を越えてインド側に避難していたが、この日たまたま故郷のマトゥピに戻っていて軍に拘束されたという。

チン州で一般住民10人の遺体が発見されたことについて軍政のゾー・ミン・トゥン国軍報道官はメディアに対して「マトゥピ地区ではテロリストであるPDFメンバーが活動中で軍部隊への攻撃を繰り返していたため小競り合いがあり、その結果死者がでて武器を押収した。軍が無抵抗、非武装の住民を攻撃することはない」と戦闘があったことは認めたが、住民の虐殺は否定した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ソマリランドを初の独立国家として正式承

ワールド

ベネズエラ、大統領選の抗議活動後に拘束の99人釈放

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡り国民投票実施の用意 ロシ

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中