最新記事

中東情勢

サウジ主導のイエメン空爆で100人超死傷、アメリカの責任問う

Calls for US to Stop Arming Saudis Following Deadly Airstrikes Against Yemen

2022年1月24日(月)18時23分
ダニエル・ビャレアル

サウジの空爆の犠牲者のなかに家族や友人を探すイエメン人(1月22日、サアダ) Naif Rahma-REUTERS

<イエメン内戦でサウジに加担し続けるアメリカに批判の声>

内戦が続くイエメンの北部サアダで21日、サウジアラビア主導の連合軍が空爆を行い、一般市民や子供が多数犠牲になった。これを受け、アメリカ政界からはサウジ軍への武器供与の停止を求める声が上がっている。

この日の空爆ではイスラム教シーア派の反政府武装勢力ホーシー派が運営する収容施設が標的となり、100人を超える収容者が死傷したと米公共放送ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は伝えている。人道支援団体の国境なき医師団は正確な数の把握は困難だとしながらも、負傷者は200人あまりに上ると発表した。援助団体セーブ・ザ・チルドレンによれば60人以上が死亡したが、収容されていたのは主に摘発された移民たちだったとしている。

イエメン西部の港町ホデイダで先ごろ行われた空爆では通信施設が破壊され、イエメンのほぼ全土でインターネットへのアクセスが遮断された。セーブ・ザ・チルドレンによれば、この空爆では近くでサッカーをしていた3人の子供も死亡したという。ノルウェー難民評議会は「民間のインフラ施設に対する厚顔無恥な攻撃であり、救援物資の輸送にも影響が出るだろう」としている。

サウジ主導の連合国はイスラム教スンニ派のアラブ諸国9カ国から構成されており、イエメンに対する空爆を15年から続けている。その背後にはロジスティクスや情報におけるアメリカやイギリス、フランスからの支援があった。ホーシー派はサウジのライバルであるイランの支援を受けているとされる。

空爆を支援してきたアメリカも同罪

連合軍はホーシー派が17日にアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビに対して行った攻撃を受け、空爆を強化。アブダビでの攻撃ではインド人2人とパキスタン人1人が死亡したとワシントン・ポストは伝えている。

その数時間後、連合軍はイエメンの首都サヌアに向けた空爆を2回行い、数十人が死亡した。イエメン内戦は10年近く続いているが、空爆によって人道危機はさらに深刻化、飢餓が広がっている。

「アメリカも共犯だ。バイデンやその高官たちが終わらせると公約したはずのこの恐ろしい戦争において、アメリカはサウジやUAEによるすべての空爆を共謀してきたのだから」と、ジャーナリストのスペンサー・アッカーマンは21日朝にツイートした。「この子たちが夜眠っている顔を彼らに見てもらいたいものだ」

トランプ前政権はホーシー派を国際テロ組織に指定していたが、バイデン政権になって指定は解除されていた。だが19日、バイデンは再指定の可能性を示唆。人道援助団体からは、ホーシー派の国際テロ組織指定はイエメン国内における援助活動の障害になるとの声が出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州・ウクライナの米提案修正、和平の可能性高めず=

ワールド

ウクライナ協議は「生産的」、ウィットコフ米特使が評

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、今後数カ月の金利据え置き

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀、追加利上げへ慎重に時機探る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中