台湾危機の「T-DAY」は間近い? 6つの有事シナリオ
シナリオ5:大規模空襲作戦
【状況】
中国政府が「グレーゾーン」戦略で攻勢を強めていることに米国とその同盟国は危機感を抱き、台湾の防衛力強化に向けた取り組みをてこ入れした。台湾への武器供与が加速され、軍需品の備蓄や正規軍と予備軍の準備態勢の強化が急ぎ進められた。
人員数と火力で劣る台湾軍は、非対称戦に向けた配備の再編を行い、中国人民解放軍の海軍艦艇や航空機、中国国内の標的を攻撃できる何百もの長距離ミサイルを分散して隠した。米軍もアジアにおける戦力を強化。日本政府の高官は台湾が攻撃を受けた場合、米国による台湾防衛を支持すると約束した。
中国の習国家主席と幹部らは、台湾を支配するには紛争を避けては通れないと判断していた。そして、中国沿岸の海域で人民解放軍が戦力面で優位に立てる可能性がわずかながらあると計算していた。米国との対立が激化する中で、行動の遅れは統一を一段と困難にし、共産党指導部が内部反乱の危険にさらされることを意味していた。中国経済は、巨大な不動産バブルの崩壊により成長が急激に鈍化し、世界最大の軍事力を実現した防衛費の大幅増額を維持することは困難だった。
指導部は、離島の奪取や封鎖などの限定的な手段を一度は検討したものの、除外した。限定的な作戦であっても、全面的侵略を行った場合と変わらず、世界的な経済危機を引き起こし、米国の介入を招く可能性が高いと計算したのだ。また、台湾が屈服するという保証もなかった。
史上最大かつ最も複雑な上陸作戦を伴う侵攻も、人民解放軍の能力を超えていると軍の作戦担当者は習主席や幹部らに説明した。失敗は、中国共産党の権力を揺るがす結果を招きかねなかった。
指導部は、台湾の防衛力に対して壊滅的な空襲とミサイル攻撃を行うことを決断。その目的は、台湾軍を破壊し、市民の意気を消沈させ、米国とその同盟国が介入する前に台湾側を交渉のテーブルにつかせることにあった。
【展開】
人民解放軍は警告なしに、台湾の主要な軍・民間の目標に大規模な飽和攻撃を実施。飛行場や港湾、防空レーダー、通信施設、軍司令部・本部、ミサイル砲台、海軍基地、主要艦艇、主要橋梁、発電所・送電網、政府庁舎、ラジオ・テレビ局、データセンター、主要幹線道路などが攻撃対象となった。
中国政府は米国とその同盟国が台湾支援のため軍を派遣するのを阻止すべく、ミサイル、海軍、空軍を投入。その後、まだ稼働可能な台湾の海軍艦艇、戦闘機、ミサイル砲台を攻撃した。
【反応】
台湾全土が激しいミサイル攻撃と空爆にさらされる中、全面的な侵攻を予期した政治・軍事指導部は地下司令部に移動。正規軍を防衛拠点に配備し、予備役も動員した。
山中に隠した格納庫から台湾軍の戦闘機が飛び立ち、人民解放軍の戦闘機に反撃。世界最高水準の台湾の防空システムが、島内各所に隠された砲台からミサイルを発射し、人民解放軍の空軍を攻撃した。
台湾の長距離弾道ミサイルと巡航ミサイルは、中国の航空基地やミサイル砲台のレーダーなどの軍事目標を攻撃した。
【結果】
台湾軍は甚大な被害を受け、主要なインフラも破壊された。中国政府は米国とその同盟国が介入する前に即時停戦を要求。台湾に、統一に向けた交渉入りに同意するよう求めた。
だがこれほど大きな被害を受けたにもかかわらず、台湾は交渉をきっぱりと拒否。予備役を動員し、残った兵力を分散して戦闘態勢を支持、中国軍の侵攻を阻止するため、上陸地点となり得る海岸線に部隊を追加投入した。米国とその同盟国は、多くの死傷者を出す甚大な被害に対する世界的な中国への反発が高まる中で、台湾の防衛力を強化するため派兵を開始した。