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生物最大の無脊椎動物、自動車サイズの巨大なヤスデの化石が発見される
不可能と思われていた大きさのヤスデの化石が発見された Poto: TU Bergakademie Freiberg
<イギリスで自動車サイズの巨大なヤスデの化石が発見された。幅55センチ、長さ2.63メートル、重さ約50キロと推定され、既知で最大の無脊椎動物だ>
「地球上で最も脚の多い生物」として話題を集めた1306本の脚をもつ新種のヤスデが豪州で見つかったのに続き、自動車サイズの巨大なヤスデの化石が英国で発見された。その研究成果は、2021年12月21日、ロンドン地質学会の学会誌「ジャーナル・オブ・ジオロジカル・ソサエティ」で発表されている。
【参考記事】1306本の脚を持つ新種のヤスデが発見される
幅55センチ、長さ2.63メートルの最大の無脊椎動物
英ケンブリッジ大学の研究チームは、2018年1月、イングランド北東部ノーサンバーランド州ホウィック湾の海崖に落下していた長さ2メートル、幅3メートル、高さ8メートルの砂岩で、約3億2600年前の石炭紀に生息したヤスデの一種「アースロプレウラ」の化石を偶然発見した。
この砂岩は2017年4月から2018年1月までに崖から落下した後、徐々に侵食していたとみられる。2018年5月には、政府当局と地主の許可を得、研究チームが4人がかりで、長さ76センチ、幅36センチの標本を取り出した。
このアースロプレウラの元の大きさは、幅55センチ、長さ2.63メートル、重さ約50キロと推定され、既知で最大の無脊椎動物となる。アースロプレウラの化石はこれまでにドイツで2体見つかっているが、いずれもこれより小さい。
アースロプレウラは、石炭紀のグレートブリテン島など、かつて赤道上にあった地域でのみ存在したとみられる。グレートブリテン島が赤道付近にあった石炭紀のノーサンバーランド州は熱帯気候であった。これまでの研究では石炭湿地で生息していたと考えられてきたが、研究チームの分析によると、「アースロプレウラは海岸近くの広い森林を好んでいた」という。
ここまでの大きさは不可能と考えられていた
現代の地球は大気中の酸素濃度が十分でないため、ヤスデや昆虫などの節足動物がアースロプレウラのような大きさになることは物理的に不可能だと考えられている。
これまでアースロプレウラの巨大さは大気中の酸素濃度の高さによるものだと考えられてきた。しかし、この化石は大気中の酸素濃度がピークに達する以前に堆積した岩から見つかっていることから、大気中の酸素濃度だけがその要因ではないとみられる。
アースロプレウラの頭部はまだ見つかっていないため、その餌生物については明らかになっていない。研究チームは、その大きさから栄養価の高いものを食べていたのではないかと考察。研究論文の筆頭著者でケンブリッジ大学のニール・デービス博士は「当時、栄養価の高い木の実や種が豊富にあった。他の無脊椎動物や両生類などの小さな脊椎動物を食べていたかもしれない」と述べている。この化石は2022年、ケンブリッジ大学のセジウィック地球科学博物館で公開される見通しだ。