最新記事

日本社会

社会への不満はあるが、政治には参加したくない日本の若者たち

2021年12月15日(水)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

社会への不満を持ちつつも、それを変える政策決定への参加は欲しない。日本の若者は厳しい状況に置かれているが、ひたすら現状を耐え忍び、それが限度に達して自らを殺めてしまう者もいる。日本の20代の死因で最も多いのは自殺だ。

さらに怖いのは、腹の底の不満(マグマ)が非合法の方向を向いてしまうことだ。暴動やテロなどだが、若者による無差別刺傷事件が続発していることからその兆候も感じられる(小田急線、京王線の事件)。

図の緑色のゾーンが広がるのは怖い。なぜ日本の若者は政治参画を望まないか。よく言われることだが、日本人は幼少期から「出しゃばるな」と頭を押さえつけられて育つ。学校でも校則で縛られ、異議を申し立てるとろくなことがない。こういう状況が継続することで、「従っていたほうがマシ、政(まつりごと)は偉い人に任せよう」というメンタルが植え付けられる。

学校というのは実社会のミニチュアで、日本の学校では児童会・生徒会活動など、民主主義の主権者としての振る舞い方を学ぶカリキュラムも組まれている。こういう場で、校則について協議してもいい。よくない所は話し合いで変える、という経験をさせることが大事だ。校則を主権者教育の題材として使えればしめたものだ。

教科である公民教育の役割も大きい。政治参画によって社会は変えられることを、具体的な事例でもって分からせる必要がある。その手段は投票だけでなく、陳情や署名なども含まれ、生徒が馴染んでいるSNSはそのツールとして機能する。そこに書き込んだ思いが政治家の目にとまり、政策につながった例もある。案外、学生とはこういうことも知らないものだ。

社会への不満(思い)を政治的関心に昇華させる。これができていないのが、日本の若者の特徴と言えるだろう。

<資料:内閣府『我が国と諸外国の若者の意識調査』(2018年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、WTOに異議申し立て トランプ関税巡り

ワールド

米国務長官、トランプ氏のガザ復興案を擁護 「敵対的

ワールド

トランプ氏、米軍のガザ派遣にコミットせず 「所有」

ワールド

トランプ氏「誰もが気に入る」、波紋広がる「中東のリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 7
    【USAID】トランプ=マスクが援助を凍結した国々のリ…
  • 8
    「僕は飛行機を遅らせた...」離陸直前に翼の部品が外…
  • 9
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 7
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 8
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中