2021年JC・JK流行語大賞を総括する──「第4次韓流ブーム」と「推し活」という2つのキーワード

2021年12月22日(水)14時04分
廣瀨涼(ニッセイ基礎研究所)

モノ部門5位の「トレカデコ」は好きな韓流アイドルや俳優のトレーディングカードをシールやペンでデコレーションする行為を指す。元々韓国の若者の間で流行していたようで、そのデコレーションした写真を「渡韓ごっこ」としてSNSに投稿する写真に紛れ込ませたり、食事と一緒に写真に写すなどして楽しむようである。

アプリ部門4位の「Qoo10」は韓国やアジアを中心とした海外の日用品や化粧品、衣料品や食品を販売している通販サイトである。前述した通り、若者の間で韓流ファッションやコスメが人気であることを背景に、低価格で簡単に韓国商品を購入できるという点が支持されている。特にコロナ禍ということもあり、外出に対して消極的な若者にとっては、通販という非対面チャネルで購入できるという点はメリットがある。一方で外出する機会が少ない中で「いつ購入した服を着用するのか?」という疑問が出るかもしれないが、人によってはTikTokの撮影時に同じ服を着用したくないと考える者もいるようで、投稿で一度着用した服が二度と被らないよう洋服を購入しているようである。SNSがインフルエンサーやユーチューバーとしての芸能界への入り口になり得る現代において、SNS上でのセルフブランディングは彼女たちの大きな関心事でなのである。また、モノ部門4位の「渡韓ごっこ」と併せていえることは、コロナ禍で外出できないからせめて、行った気分になりたい、画面の中だけでも着飾りたいという、コロナ禍の生活様式に合わせた消費文化が若者の間で根付いて(適応して)きているという点である。

最後にアプリ部門5位の「UNIVERSE」であるが、韓国のアイドルのMVやLIVE、非公開映像等を日本語字幕付きで視聴できるアプリのことである。

以上7つの流行語を簡単に解説したが、2021年下半期において、若者の多くが韓国文化の影響を大きく受けていた、ということがおわかりいただけたのではないだろうか。以前は原宿発のように一か所の拠点を中心に流行が各地へ伝わっていったが、SNSの普及により「SNSで流行っている=流行の発祥」となることが増えたように感じる。また、以前は韓国で流行っていたものが後追いで日本で流行するというケースが多かったが、UNIVERSEやYouTubeなどのSNSのおかげでタイムラグなしで、韓国の若者の日常を知ることができ、現地とほぼ同じタイミングでトレンドが消費されているようにも思われる。

SNS上でバズるコンテンツは国境を超える

特に「ガルプラ」は日中韓3か国を巻き込んで行われていたこともあり、流行の規模が1か国単位ではなくアジアという大きな括りの中で行われた。コロナ禍において人々の生活様式は変化し、行動が制限されたことで、特に若者においては、自身が消費する行動(経験)や実体験よりもSNSにおける他人の投稿(疑似体験)やコンテンツからエンターテインメントへの欲求を充足する消費文化が浸透しつつある。言い換えれば人々は何か面白いモノをSNS上で探究し続けており、そのニーズを充足するかのように、昨今のSNSでバズるコンテンツの多くはボーダレスで、わかりやすく、画一化を意識して製作されている。国籍や年齢層関係なく楽しめるコンテンツがより好まれるようになったことで、SNSの利用頻度が高く、発信力も高い若者層で流行していくトレンドは、今後特定の年齢層や特定の地域だけで消費されていくのではなく、今よりも益々大きく、国際的な規模に拡大して消費が行われていくと筆者は考える。

3──キーワード2「推し活」

次に2つ目のキーワードである「推し活」について論じる。元々オタクと呼ばれるコンテンツを嗜好する消費者達によって使われていた言葉であり、「好きな芸能人や声優など、人を応援すること」を意味する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米移民当局、レビット報道官の親戚女性を拘束 不法滞

ワールド

IMF、ウクライナ向け支援巡り実務者レベルで合意 

ワールド

ウクライナ和平交渉担当高官を事情聴取、大規模汚職事

ビジネス

米ホワイトハウス付近で銃撃、州兵2人重体 トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中