メルケル後のドイツ新政権は日本を見習え
Germany Can Learn From Japan’s China Strategy
中国と緊密で複雑な関係にある日本は、新たな環境に適応できるように体制を整えた Oleksii Liskonih-iStock
<中国の台頭とデジタル技術の発展によって景色が一変した地政学的環境に対応が追いつかないドイツ。メルケルの後を継ぐ新政権は、体制改革を行った日本のアプローチを見習うべきだ>
中国との関係において、経済と国家安全保障、そして民主主義的な価値の適切なバランスを見つけることは、ドイツにとって、外交政策上の最大の課題の一つだ。
この点でドイツが日本から学ぶべきことは多い。日本もまた中国との経済的関係が大きい国であり、習近平国家主席の下で中国政府が独裁主義に転じ、国外でも発言力を増していることに警戒感を抱いている。
中国との複雑な関係だけでなく、ドイツと日本には多くの共通点がある。どちらも第二次大戦の敗北と壊滅的な被害から立ち直り、経済および技術大国として頭角を現した。両国の外交政策には平和主義の傾向が強い。そして、安全保障をアメリカに大きく依存している。
重要な違いもある。ドイツは昔、冷戦の最前線にいた。日本は今、新たな冷戦ともいえそうな対立の最前線にいる。この新しい時代には、貿易、技術、安全保障、人権の境界線がどんどん曖昧になっている。国家安全保障の取り組み方もそこに適応させる必要があるが、日本はその点でドイツよりも速かった。
中国の脅威に対応する姿勢
2013年、当時の安倍晋三首相は、日本の外交と安全保障の再編を主導した。それは第二次大戦以降、最も野心的な制度改革だった。彼は国家安全保障会議を創設し、日本初の国家安全保障戦略を発表した。
10月初旬に就任した岸田文雄新首相は、さらに一歩進んで経済安全保障担当大臣という新しい閣僚級の役職を設けた。サプライチェーンの強化や重要なインフラの保護、経済を利用した他国の脅しに対抗するための政府の取り組みを調整する立場だ。
このポストにはツイッター名「@kobahawk」で知られる46歳の前途有望な政治家、小林鷹之が任命された。
岸田首相はまた、中谷元防衛相を内閣総理大臣補佐官(国際人権担当)に任命した。日本がこれまで、外国の人権問題に強い姿勢を取らずにきたことからすれば、これは注目すべき人事といえる。中谷の任命は明らかに、新疆ウイグル自治区と香港における中国の行動と関係している。台湾問題に関してもこの1年、日本は以前よりはるかに積極的になった。