メルケル後のドイツ新政権は日本を見習え
Germany Can Learn From Japan’s China Strategy
日本は中国と地理的に近く、緊密な経済関係があり、過去数十年間、慎重な外交姿勢を保ってきたが、それでもこのように行動を起こしている。
2020年の日本の輸出の20%以上は中国向けだった。アメリカとドイツの場合、対中輸出は全体の約8%にすぎない。日本政府は対中政策について、アメリカやドイツよりも、より微妙なバランスを取らなくてはならない立場にある。それでも、新しい地政学的現実にみずからの外交アプローチを適応させようという意欲は満々だ。
アンゲラ・メルケル首相の後を継ぐ態勢を整えている社会民主党(SPD)のオーラフ・ショルツ次期首相候補は、そこに注目すべきだ。ドイツの国家安全保障体制は、急速に進化する地政学的環境に追いついていない。
16年に渡るメルケルの首相在任中、連邦首相府の規模はほぼ倍増し、ドイツの外交政策立案の中心的存在となった。しかし省庁間の調整は、ドイツの政治システムでは野党の政治家によって主導されることも多く、うまくいかないようだ。
それが最も目立ったのは、おそらくドイツの5Gモバイルネットワークに中国の通信大手である華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を含めるかどうかの議論のときだった。これは、経済的、技術的、安全保障上の影響を伴う政策の選択であり、政府全体で対応しなければならない課題だった。
部門間の壁が足かせ
実際には、ドイツの5Gに関する決定は長期化し、何年もかかった。閣僚は自分の限られた課題を追求するばかりで、首相府は明確な進路を決めることができず、合意を形成することができなかった。結局、ドイツ議会が最終決定を下すことになり、メルケルは自分が望んでいたよりもはるかに厳しい制限を受け入れざるをえなくなった。
こうした部門間の壁を取り払うことは、環境保護主義の緑の党と、リベラルな自由民主党との前途多難な三党連立政権を率いるショルツにとって、最優先事項であるべきだ。
メルケル内閣の財務大臣として、ショルツはファーウェイの役割を含む中国関連の大きな政策問題について明確な立場を取ることを避けた。
ドイツ総選挙の選挙運動中、彼は外交政策の継続性を説いた。しかし、緑の党と自由民主党はメルケルのアプローチに批判的で、特に人権に関してより強硬な路線を求めている。
問題は、今日の外交政策の意思決定の中心にあって、矛盾することが多い経済、国家安全保障、価値観の優先順位という問題に一貫性をもたらす包括的な戦略がないまま、さまざまな声が不協和音を奏でていることだ。
ドイツの連立交渉の初期の公式声明によると、各党は日本が10年近く前に導入したような強固な国家安全保障会議を創設しないことに決めた。だが新政府がやるべきことは、これまで武器輸出に的を絞ってきた連邦安全保障委員会で扱う問題の範囲を広げ、定期的な会議を増やすことだ。