最新記事

ウクライナ

ロシアが国境で部隊増強、ウクライナを攻める準備か

U.S., NATO, EU Rally to Support Ukraine as Russia Masses Troops on Border

2021年11月17日(水)17時40分
ジャレン・スモール

ロシアの侵攻に備えるウクライナ軍兵士(9月24日、ヤヴォリウ) Gleb Garanich-REUTERS

<いつもの脅しなのか、それともクリミアを奪取したときのように本気で攻めてくるのか、米バイデン政権の民主主義を守る覚悟も問われる>

最近になってウクライナの東部国境にロシア軍の部隊が集結している件について、アメリカとウクライナの両国は、これがウクライナへの侵攻作戦の準備の可能性があるとして、ヨーロッパの同盟国に対して警告を発した。

ロシア側がすべては平常通りだと主張し続ける一方で、ウクライナは同盟国に対し、支援と保護を呼びかけている。

「攻撃的なロシアを抑止するには、ロシア政府に対してウクライナの強さを明確に示すだけでなく、ウクライナには強力な同盟諸国がついていてウクライナと共に立ち向かうことを明確にする必要がある」と、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は11月10日、アメリカのアンソニー・ブリンケン国務長官との共同会見で語った。

人口4400万人で、長年の武力紛争から軍がいまだ再建途上にあるウクライナは、今回のようなやり方で威嚇や脅迫を繰り返すロシアを激しく非難する。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2014年にウクライナのクリミア半島を武力で併合しており、これがウクライナの不安をいっそう煽っている。

ウクライナ国防省は、「ロシア連邦がこの地域の緊張状態を継続させ、近隣諸国に政治的圧力をかけるために、定期的に軍の部隊を派遣・結集させる手段に訴えてきたことは、指摘されてしかるべきだ」と述べている。

専制主義に対する戦いの最前線

EU加盟をめざす親欧派ウクライナの主権は、「民主主義と専制主義の戦いのなかでも重要な位置を占める」と考える米政権は、ウクライナの支援の求めに応えようとしている。

アメリカ国務省は、両国間の戦略的パートナーシップを今後も順守し、適切な機密情報の共有や、軍事技術開発における連携、ウクライナ軍(UNA)への投資などを行う意向だという。

ブリンケンはウクライナ外相との共同会見で、「ウクライナの独立、主権、領土の保全に対するアメリカの支持は非常に強固なものだ」と発言し、この地域における政治、経済、安全保障面でのウクライナの重要性を強調した。

ヨーロッパの同盟諸国も、ウクライナの支援に乗り出している。欧州の28カ国(とアメリカおよびカナダ)で構成される軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)は、クリミア半島とウクライナの国境沿いの地域におけるロシアの軍備増強を公に糾弾。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はロシアに対し、西側諸国の軍事同盟であるNATOはウクライナ支持の立場を堅持していると警告し、ツイッターにこう投稿した。「NATOは、ウクライナの国境付近におけるロシア軍の大規模かつ異常な集結を注視している。我々はロシアに対し、透明性を保ち、状況の深刻化を防ぎ、緊張を緩和するよう要求する」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中