最新記事
健康「亜鉛が風邪の予防や治療に役立つ可能性がある」との研究結果
亜鉛が風邪の症状を予防する...... danleap-iStock
<豪州の西シドニー大学の研究によって、亜鉛が風邪の症状を予防したり、有症期間を短縮できる可能性があることがわかった>
亜鉛が風邪やインフルエンザ様といった急性ウイルス性呼吸器感染症の症状を予防したり、有症期間を短縮できる可能性があることが明らかとなった。
豪州の西シドニー大学ジェニファー・ハンター博士らの研究チームは、計5446名の成人を被験者として米国、西欧、中国、豪州で実施された28件のランダム化比較試験(RCT)をメタ解析し、その研究成果を2021年11月2日、オープンアクセスジャーナル「BMJオープン」で発表した。
対象となったランダム化比較試験のうち4件は亜鉛の予防効果を検証したもので、17件はウイルス性呼吸器感染症と一致する症状の治療に関する研究であった。また、一般的な風邪を引き起こすヒトライノウイルス(HRV)に被験者を意図的にさらし、その予防や治療への亜鉛の効果などを検証するものも含まれている。
「亜鉛が欠乏する人にのみもたらされるものではない」
研究論文によると、トローチ剤や錠剤、シロップなどの経口用亜鉛またはジェル、スプレーといった経鼻投与用亜鉛は、偽薬(プラセボ)に比べて、軽症から中等症を発症する相対的リスクが32%低く、重症化するリスクも87%低かった。ただし、ヒトライノウイルスに意図的に感染した場合、亜鉛の予防効果に有意差は認められなかった。
経口用亜鉛または経鼻投与用亜鉛を治療に用いた場合、偽薬に比べて平均2日早く症状が回復し、ピークとなる3日目の症状の重症度が軽減された。亜鉛を用いた場合、1週間後も症状が継続する患者数は100人あたり19人減少すると推定される。ただし、亜鉛の剤型や用量、投与経路による臨床効果の違いについては明らかになっていない。
また、亜鉛は、悪心や口腔・鼻腔の炎症などの非重篤な有害事象のリスクが高まるものの、経口用亜鉛による銅欠乏や経鼻投与用亜鉛による嗅覚消失といった重篤な有害事象のリスクは低かった。
研究チームでは「ウイルス性呼吸器感染症の予防や治療への亜鉛の効果は、亜鉛が欠乏する人にのみもたらされるものではない」と考察している。たとえば、米空軍士官学校の士官候補生40名を対象とする2009年の研究結果や55~87歳の米国人55名を対象とした2007年の研究結果ではいずれも亜鉛が欠乏する人が被験者から除外されていた。
風邪の有症期間が短縮される可能性
ハンター博士は、一連の研究成果について「亜鉛には亜鉛欠乏を補う栄養補助食品以上の効果を持つ可能性があることを示すものだ」と評価。亜鉛によって風邪の有症期間が短縮され、ピーク時の2~4日目に重症度を軽減する可能性について言及し、「依然として世界的に問題となっている抗生物質の誤用に代わる手段となりうるだろう」と述べている。