最新記事

皇室

眞子氏バッシングの日本に足らないもの

On Japan's 'Megxit,' We Need a Feminist and Human Rights Conversation

2021年11月2日(火)10時30分
嶋田文(カルチャーラボ代表・東京大学客員研究員)
眞子

小室夫妻の結婚に反対するデモ(10月26日、東京)

<小室眞子氏と小室圭氏の結婚を批判するのは、自らの不安の裏返し。多様なルーツを持つ娘の母親として、私は眞子氏への接し方から日本を変えていきたい>

先週、私はズーム会議の合間に東京のコワーキングカフェで12歳の娘の宿題を手伝っていた。ニューヨークのブルックリンから転校してきた彼女にとって、日本語での勉強は大変だ。その時、私の携帯電話にポップアップでニュースが表示された。「眞子さまは多くの人に反対されても結婚に突き進む」。つい反応してしまい、娘の方を見て「この見出しはいじめだ」と説明した。ついでに婚姻の平等や著名人の発言の揚げ足を取るキャンセルカルチャー、昨今のネットにおけるクリック優先のアルゴリズムについて教えようと思った私の機先を制して、娘はこう言った。「学校で聞いてる」

秋篠宮眞子内親王は先週、小室圭氏と婚姻届を出した。結婚式はなし。そして記者会見で、結婚は自分と夫の心を守るために必要な選択だった、と語った。吉事というより、まるで生き延びるための脱出のようだ。女性皇族に関する法律により、彼女は結婚で皇族としての地位も失った。

日本には昔から、型にはまらない人をスケープゴートにする「排除」の文化が根付いている。いじめは昼間のワイドショーやソーシャルメディア、所属するコミュニティあるいは組織によって支えられている集団的習慣であり、ほとんど娯楽だ。

私の子供が通う学校の子供たちは、ニューヨーク・タイムズ紙などが「国民のスケープゴート」と報じている眞子氏について何と言っているのだろうか。親が語るニュースの見出しをそのまま繰り返している? まさかソーシャルメディアに書かれているように、眞子氏がストレスからPTSDを発症した後も、彼女の夫選びを見下したように遠慮なくあざけり非難している? 聞いても、娘は答えないだろうけど。

私は若い頃、娘と同じ東京の小学校に通っていたことがある。一番生々しい記憶はひどいいじめだ。クラス全員が見ている中、一人だけが孤立してからかわれる日本独特のいじめ。教室の四方の壁が30人以上の子供たちの笑い声で震える中、一人の子供が泣きながら耐え、時には苦しそうな悲鳴を上げる。そして、それが後にひどい物まねで馬鹿にされる......忘れられない。いじめられっ子を助けることもあったけど、恐ろしく、無力で残るのは怒りばかり。15歳で不登校になり16歳で単身渡米するまで、私にとって学校とはこういうものだった。

ソーシャルメディアが新たな要因になっているとはいえ、状況は当時と大して変わっていない。日本政府の調査によると、職場でのいじめは2010年以来、学校でのいじめも6年前から増え続け、現在、日本の学校の83%がいじめの事例を報告している。いじめ研究者の森田洋司氏によると、日本の集団主義的な文化的圧力は、多数の無言の傍観者の形で現れる。彼らは意図的ではないものの、何もしないことでいじめを支持している。まさに私の子供時代に教室で起きていたことと同じだ。人々は声を上げる代わりに黙って見つめている。日本のことわざ「出る杭は打たれる」のこれほど的確な実例はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

JPモルガンCEO、クレカ金利上限案に改めて反対 

ワールド

トランプ氏「カナダは米に感謝すべき」、カーニー氏の

ワールド

トランプ氏、ゼレンスキー氏と22日会談 「合意可能

ワールド

トランプ氏、グリーンランド「大枠合意」 武力行使否
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の核開発にらみ軍事戦略を強化
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中