最新記事

自動車

EV新興企業リビアンはテスラの敵か、それとも味方か?

2021年11月27日(土)16時30分
竹内一正(作家、コンサルタント)
リビアンのEVトラック「R1T」

米市場ではSUVとピックアップトラックが主流(写真はリビアンのR1T) Brendan McDermid-REUTERS

<新興EVメーカー「リビアン」のIPO(株式上場)が世界の話題をさらった。IPOで調達した資金は約120億ドル(約1兆4000億円)。これはテスラがIPOで得た資金額の約60倍に上る。なぜ、リビアンに熱い視線が集まるのか。死角はないのか。そして、リビアンはテスラの敵となるのか。テスラに関する著書を多く執筆してきた経営コンサルタントの竹内一正氏が解き明かす>

乗用車でなく、SUVとトラックで攻めるリビアン

2020年での売上金額はゼロで、10億ドル(約1130億円)の赤字を出した会社がある。しかも今年はその赤字が12億ドルに膨らむと予想される。こんな会社に一体誰が投資するだろうか?

ところがこの会社は株式を今年11月に上場し、約120億ドルの資金を集めた。それが新興EV(電気自動車)メーカーのリビアンだ。

リビアンが販売するEVのピックアップトラック「R1T」は135kWhのリチウムバッテリーを搭載、フル充電で約500kmの航続距離を実現、価格は約7万ドルで、今年9月から販売を開始した。

次に販売を予定しているのはSUVの「R1S」で、12月に出る予定だ。

テスラがセダン型などの乗用車EVで世間の注目を集めたのに対し、リビアンEVはピックアップトラックとSUVに絞って戦いを挑む。

そこには米自動車市場の特殊事情があった。

日本では新車販売のうち、トラックとSUVが占める割合は全体の約2割程度に過ぎないが、アメリカではSUVが全体の5割超、ピックアップトラックは約2割を占め、両方を合わせると7割以上になる。また、これらの車種は利益率も良い。だからこそ、テスラもフォードもGMもEVトラックを現在準備している。

リビアンはアメリカで最も売れるゾーンでEVトラックを初めて登場させたメーカーになった。

しかし、今年第3四半期でリビアンが製造したR1Tはたった12台だった。それにもかかわらず、IPOで120億ドルもの巨額を集めた背景には、持続可能社会、クリーンエネルギーシフトという大きな波があったことは明らかだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中