最新記事

ドイツ

ドイツも部分的ロックダウン ワクチン普及70%でも感染拡大のなぜ

2021年11月24日(水)15時50分
モーゲンスタン陽子

ワクチン接種済みまたは感染から回復済みの人のみ入場できる...... REUTERS/Thilo Schmuelgen

<再び感染が急拡大しているドイツ。どうして急拡大したのか、また現地の反応は...... >

昨年を超える勢いで感染が拡大しているドイツ。夏頃から各種規制が緩和されていたが、感染拡大を受けてコロナ規制が復活し、特に感染率の高い地域では、おもにワクチン未接種者を対象とした事実上のロックダウン状態に入る。ドイツ全人口の70%近くがワクチン接種済みであるにもかかわらず、なぜ今感染拡大なのだろうか。

冬の終わりまでに「ワクチン接種か、回復か、あるいは死か」

感染が他の地域より多い南部のバイエルン州ではマルクス・ゼーダー州首相が州全土での2Gルール(ワクチン接種済みまたは感染から回復済み)の徹底導入を発表、 これによりワクチン未接種の人々に「事実上のロックダウン」が課されることとなった。ロベルト・コッホ研究所(RKI)によると、バイエルン州では19日に10万人あたり約625の感染が記録されており、全国平均の約341をはるかに上回っている。また州政府は7日間の発生率が10万人あたり1,000を超えるすべての地区に封鎖を課した。これらの場所では、バー、クラブ、レストラン、文化施設、スポーツ施設が閉鎖される。

12月といえばクリスマスマーケットの季節で、ニュルンベルクやミュンヘンなどではすでに建設が始まっていたがそれも中止となり、デコレーションを片付ける人々の姿がもの悲しい。2年ぶりのマーケット開催となるはずだったため、市民の落胆も大きい。ただし、学校や幼稚園は継続される模様だ。

発生率が1,000未満の地域でも制限がある。スポーツや文化イベント、小売店など、条件や施設、時間帯などにより入場制限や「2G +」ルール(2Gの条件を満たしている人でも陰性のテスト結果が必要)が適応される。また公共交通機関にも今後「3G」ルール(接種済み、回復済み、あるいはテスト陰性)が適応される。

ワクチン未接種者は美容院や大学などにもアクセスできなくなり、他人との接触制限も課される。ドイツでは現在感染者数ではなく病院の病床占有数で「赤・黄・緑」信号の呼称を用いているが、赤信号の現在、入院中の新型コロナ患者の約90%がワクチン接種を受けていないとゼーダー州首相は指摘している。

バイエルンと国境を接するオーストリアでは感染がさらに深刻な状況で、全国的なロックダウンとワクチン接種義務に踏み切ったが、ゼーダーもこのような措置の必要性を強調している。また、イエンツ・シュパーン連邦保健相は、ドイツ国内のほとんどの人間がこの冬の終わりまでに「ワクチンを接種しているか、回復しているか、あるいは死んでいるだろう」と警告し、世界を驚愕させた。

右翼と感染増加の関連性

バイエルン以上に発生率が高い州は東部のテューリンゲン州とザクセン州だけだ。これらの州ではワクチン接種率が全国平均を下回っている。

発生率の高いバイエルンの大部分がオーストリアと国境を接していることは関連があるようだ。この地域には越境通勤者や週末を国境付近のアルプスで過ごす旅行者も多い。ミュンヘン工科大学のウイルス学者ウリケ・プロッツアーによるとドイツで登録されている約46,000人の越境通勤者のほとんどがバイエルンで働いているという。

また、この地域は保守的でもあり、山間部に近い中堅都市のローゼンハイムでは、ワクチン完全接種率が全国平均を10%近く下回っている。保守的な山間部では多くの人々にワクチン接種リスクの過大評価、コロナの過小評価、あるいは自然療法への傾倒が見られるという。イタリアでも同様に、オーストリアに近いドイツ語圏(南チロル地方)での接種率低迷が報告されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、売上高見通しが予想上回る 株価2%高

ビジネス

FRB、明確な反対意見ある中で利下げ決定=10月F

ワールド

ゼレンスキー氏、トルコの和平仲介に期待 エルドアン

ワールド

EXCLUSIVE-米、ウクライナに領土割譲含む紛
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 7
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中