ドイツも部分的ロックダウン ワクチン普及70%でも感染拡大のなぜ
一方、東部のテューリンゲン州とザクセン州では話が異なる。これらの地域では極右政党AfDの支持率が極端に高い。9月の総選挙で30%以上を獲得しAfDが最強の党となったザクセンでは接種率わずか52%だ。AfDは以前から政府の対コロナ措置に非協力的だ。ザクセンと、最高接種率・最低発生率の北部ブレーメン州を比較すると、ブレーメンではAfDへの支持も7%未満と非常に低く、見事に対照的な結果となっている。
また、教育水準の低さが右翼的思想と結び易いことはドイツに限らず以前から世界中で指摘されているが、ベルリンのフンボルト大学社会科学研究所のハイケ・クレーバー教授も、今年3月に2万人以上を対象に行われた調査に基づく結果として「教育とワクチン拒否に著しい相関性がある。教育レベルが低いほど拒絶も高い。そしてワクチンを拒否する人はAfDへの投票率が高く、右翼思想である傾向が高い。加えて、政治や政府、メディア、ヘルスケアシステムへの信頼度が低い」と ドイチェ・ウェレ に語っている。
シュピーゲル・インターナショナルの作成した地図でも、発生率とAfD支持率の関連性は一目瞭然だ。第五波を「反ワクチン主義者のパンデミック」「愚か者のパンデミック」などと呼ぶ政治家や科学者も出てきているなか、ウイルス学者のクリステアン・ドロステンなどはそのような見方に懐疑的で、パンデミックはパンデミックでしかないとしている。
カギはやはりワクチンの更なる普及
ドイツの近況は世界的にも大きく報道されているが、実際のところ、ワクチンを完全接種した身としてはそれほどの不自由や脅威は感じない。基本的なルールさえ守っていれば、そこそこ普通の生活ができる。特に昨年〜今年前半の非常に厳しいロックダウンを耐えたあとでは、なおさらそう感じる。筆者はバイエルン州に暮らしているが、感染は確かに周りでも徐々に増えている。ワクチン完全接種済みの人でも罹っているし、児童の感染も多いようだ。
ただ、昨年以上に感染が多いからといってワクチンに懐疑的になるのは短絡的だ。現在猛威を奮っているのはおもにデルタ変異株であり、昨年の今頃とは状況が違う。昨年はテストセンターや自己テストなども今ほど普及していなかったため、未報告のケースも多かったと思われる。また1年前は、接触制限や外出制限、さらには夜間外出禁止令など、現在よりもはるかに厳しい規則があった。一方現在は、感染は増えていても死亡するケースは減少している。
カギはやはりワクチンの更なる普及だろう。現在入院中の患者のほとんどがワクチン未接種者か、60歳以上の高齢者だ。高齢者は早くにワクチンを接種したが、接種後の免疫反応の低下が若者より早い。
さらに、人々の気の緩みもある。先月、他州でライブハウスのギグに行ったが、2Gイベントとはいってもマスクなしの蜜の状態で何時間も過ごすのは、あとから考えると気持ちのいいものではなかった。ワクチンを接種していてもウイルスを拡散する可能性はあるし、パスポート有効化のための偽造コードもかなりの数出回っており、実際に2Gイベントでのクラスター発生も起こっている。
ワクチンが完全ではないにしても、接種率と感染率増加の関連性がこれだけ明白に出ているのだから、ワクチンは接種すべきだろう。ただ、反ワクチン派への非難が高まるなか、何らかの理由でワクチンを接種できない人々への更なる配慮も必要と思われる。
バイエルン州では24日0時からさらに厳しい制限が敷かれる。今週は親しいアメリカ人友人宅にサンクスギビングの祝宴に呼ばれているが、個人宅での集いにも2G+が当てはまる。ワクチン未接種者にはさらに、最高2家族5人までの接触制限が課される。
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