最新記事

スマートスピーカー

個人宅から音声3500件を収集 スマートスピーカーの実態が波紋

2021年11月1日(月)15時56分
青葉やまと

大量の音声データが保存されていた...... fabioderby-iStock

<スマホも含め、音声アシスタントは想像以上の音を録音・送出しているようだ>

スマートスピーカーが人気だ。音声アシスタントを搭載し、日常の雑用をさりげなく手助けしてくれる。お気に入りのミュージックを再生するといった基本的な操作はもちろん、対応製品と連携させてスマートホームを構築すれば、照明をつけたり玄関を解錠したりすることも可能だ。

一歩未来の暮らしを実現してくれるスマートスピーカーだが、プライバシーにまつわる懸念は絶えない。AIアシスタントに対して話しかけた音声は、命令内容を解釈する目的で、各社のサーバに送出・保存される。スマホのAIアシスタントも同様だ。

このたびSNS上で話題となった動画により、こうした音声が想像以上の規模で保存されていることがわかり、波紋を広げている。

3500件の音声ファイル

問題の動画は、あるTikTokユーザが投稿したものだ。自宅でAmazonのスマートスピーカー3台を愛用しているというこの女性がデータの開示を求めたところ、膨大な量の音声ファイルが同社のサーバ上に保存されていることがわかった。英サン紙が報じ、米ニューヨーク・ポスト紙、豪『news.com.au』などが追って取り上げた。

Amazonから開示されたデータを女性本人が確認すると、そこには大量の音声データが保存されていた。1件1件は数秒程度と短いものの、合計数は3534件に上る。多くはAlexaに話しかけた音声の記録だ。TikTokの動画内で公開されているファイルの一例には、「Alexa、照明をつけて」と命じる声が、室内の環境音とともにはっきりと記録されている。

このユーザは明らかにしていないが、理論的にはさらにプライベートな情報が録音されていた可能性もある。AIアシスタントに頼んで購入した商品の商品名や、背後の生活音など、記録されることに不快感を覚える内容があっても不思議ではない。

女性は2台のAmazon Dotと1台のAmazon Echoを利用している。音声ファイルのほか、同期した覚えのないスマホ上の連絡先情報に加え、スマートスピーカーの正確な設置場所を示す位置情報ファイルがサーバ上に保存されていたという。

一連の経緯を本人がTikTokで公開すると瞬く間に世間の関心を引き、19万を超える「いいね」を集めた。AIアシスタントが音声を録音・送信していることはある程度知られているが、1ユーザについてこれほどの規模に上ると予想できていた人は少なかったようだ。また、録音されていること自体を知らないオーナーもいた。「これは恐ろしいことだ」と述べるコメントなど、さまざまな反応が寄せられている。

基本は音声コマンドだけを録音するが......

スマートスピーカーとスマートフォンは、常に部屋の音を録音しているわけではない。ウェイク・ワードと呼ばれるあらかじめ決められたワードを検知した場合にのみ、聞き耳を立てるようになっている。「Alexa」「OK Google」「Hey Siri」などがウェイク・ワードの一例だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中