最新記事

フィリピン

比ドゥテルテ大統領、政界引退表明 副大統領出馬撤回、憲法違反指摘受け

2021年10月3日(日)08時23分
大塚智彦

突然の引退表明をしたドゥテルテ大統領 ロイター/Eloisa Lopez

<国民の圧倒的な人気を得ていた男が突然の引退表明──>

2022年5月に行われるフィリピンの大統領選挙に最大与党「PDPラバン」から副大統領候補として出馬していたドゥテルテ大統領は10月2日、政界引退を表明した。これにより副大統領候補としての出馬を事実上撤回して、党内の別の候補が副大統領候補として出馬することになった。

突然の大統領選からの撤退そして政界引退は、現職の大統領が副大統領候補として出馬するという異例の事態に対し各方面から「憲法違反の疑いがある」との指摘を受け、国民の間にも反発が広がったことが背景にあるとみられている。

今後は各種世論調査で次期大統領候補として最も人気があるにも関わらず出馬を見送っているドゥテルテ大統領の長女でミンダナオ島ダバオ市のサラ・ドゥテルテ市長の動向が最大の焦点となりそうだ。

ゴー上院議員が副大統領候補に

ドゥテルテ大統領は2日、マニラ首都圏パサイ市の立候補受付会場を訪れた際に「私は政界を引退する」と突然表明し、同じ与党「PDPラバン」のクリストファー・ボン・ゴー上院議員が代わりの副大統領候補として出馬を届け出たたことを明らかにし、自らの副大統領候補としての出馬を撤回した。

ゴー上院議員は、ドゥテルテ大統領を副大統領候補として指名した9月8日の党大会で大統領候補として指名を受けながらも、受諾を頑なに拒否していた。しかしドゥテルテ大統領の副大統領出馬辞退という事態を受けて、「代わりに私が(ドゥテルテ大統領の)意思を継いで副大統領に挑む」として出馬を受け入れた。

このため「PDPラバン」の大統領候補としては9月19日に一部支持派によって指名されたプロボクサーのマニー・パッキャオ上院議員、副大統領候補としてゴー上院議員という顔ぶれとなる。

もっとも与党内にはドゥテルテ大統領支持派とドゥテルテ大統領批判を強めるパッキャオ支持派による内部対立が激化しており、党分裂の危機にあるともいわれている。またパッキャオ氏が別の党の議員を副大統領候補として指名する動きを見せていることから、この2候補がすんなり同党の最終的な正副大統領候補として決まるかどうかは不確定という。

憲法違反という批判の高まり

フィリピン憲法は大統領の任期を「1期6年」と規定しているため現職のドゥテルテ大統領は2022年の大統領選には大統領候補としての出馬はできない。しかし副大統領としての出馬は禁止規定がないため合法的とされる。そうした盲点を狙った形の「奇策」がドゥテルテ大統領の副大統領選出馬だった。

しかし、仮にドゥテルテ大統領が副大統領に当選して就任した場合、大統領に病気、死亡、弾劾など職務履行不能の状況が生じると、副大統領が大統領に昇格する規定となっている。そうなると大統領経験者が再度大統領就任となるため「憲法違反は明らか」との批判が高まっていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中