最新記事

アメリカ社会

【現地ルポ】リベラル州ハワイ、全米トップクラスのコロナ対策とその反動

2021年10月2日(土)14時30分
阿部 純(ハワイ大学マノア校客員研究員)

しかし、デルタ株の影響によって8月上旬からは感染が急拡大し、人口約140万人のハワイで1日当たりの新規感染者が1000人を超える日もあった。

こうした状況下でホノルル市のリック・ブランジャルデイ市長は「セーフ・アクセス・オアフ」プログラムを発表。これにより9月13日からホノルル市を含むオアフ島全体では、レストランや映画館といった屋内施設の従業員にワクチンの接種完了が義務付けられ、利用者には接種証明の提示が求められるようになった(従業員の場合は陰性証明を毎週提示、利用者は48時間以内の陰性記録の提示でも可とされている)。このプログラムは60日間続く予定だ。

コロナ対策による生活の変化は、筆者自身、日々感じている。

例えば、接種記録提示の義務はショッピングモールのフードコートでも適用されており、接種証明を見せなければ席に座って食べることはできない。一方、ある大型スーパーのフードコートでは机と椅子が端に寄せられており、利用不可となっている。こちらでは市の厳しい規則に対応することが困難なことから、フードコートでの食事を一律中止する方向に舵を取ったようだ。それぞれの店が対応に追われている。

abe211002_hawaii1.jpg

普段は観光客も多く利用する「ロイヤル・ハワイアン・センター」のフードコート。座って食事するには、ワクチン接種記録を見せる必要がある(9月20日) Jun Abe

結束を呼び掛ける団体も

このような厳しい感染対策に対して、ホノルルでは反発も起きている。

ここ最近ワイキキでは毎週「フリーダム・メガ・マーチ」と称されたデモが実施されている。主催しているのは「アロハ・フリーダム連合」という団体で、ホームページにはハワイにおけるロックダウンや義務化によって「不当な扱いを受けている全ての人々を団結させるために2020年9月に設立された」と記されている。

パンデミックに対する連邦・州・郡の対応について、政府の政策や指示は不透明であり、合衆国憲法によってアメリカ人に与えられている権利を考慮していないと主張してきた。

そもそもコロナ対策への抗議自体、今に始まったことではない。オアフ島における昨年8月の2回目のロックダウン後には、ホノルル市庁舎付近にデモ隊が集まってロックダウンやマスク着用義務に抗議した。コロナ対策への反発は昨年から続いており、その様子は現地メディアによって報じられてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ムーディーズ、イタリアを23年ぶりに格上げ 「Ba

ワールド

中国のインドネシア産原油輸入が急増、イラン産の産地

ビジネス

米当局、武田薬品の血液疾患治療薬を調査 小児患者死

ビジネス

中国首相が独首相と会談、戦略的産業で緊密な協力関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中