【現地ルポ】リベラル州ハワイ、全米トップクラスのコロナ対策とその反動
州全域でのロックダウンや外出時のマスク着用義務など、厳格なコロナ対策を実施してきた米ハワイ州(写真は2020年4月29日、ワイキキビーチ) Marco Garcia-REUTERS
<新型コロナの流行以来、ロックダウンなど厳格な規制が実施されてきたハワイ州。こうした措置に抗議するデモが行われているが、その目的は「反マスク」でも「反ワクチン」でもないという。ハワイで何が起きているのか>
コロナ禍以前は、日本人観光客で賑わいを見せていたハワイ。伝統的に民主党支持であり、リベラルな風潮が強いとされる。先の大統領選挙でも得票率約64%でバイデンが圧勝。民主党寄りの州ではワクチンの接種率が高い傾向にあり、ハワイ州でもワクチン接種が早いペースで進められてきた。
しかし今、そのハワイがコロナ規制への「抗議デモ」に揺れている。デモの主催団体の一つは「反マスク・反ワクチンが目的ではない」と言っているが、その真意とは──。
ハワイの入念なコロナ対策と新たな規制プログラム
筆者は今年の7月末からホノルルに住み始めた。現在ハワイ大学マノア校に客員研究員として所属している。コロナ禍での入国であったため、出国前には自己隔離免除のためにPCR検査を含む核酸増幅検査を受診し、英語の陰性証明書を取得。また健康状態に関する申告フォームに回答し、QRコードを入手した。ハワイ到着後には、QRコードと陰性証明書を提示することで、やっと外に出ることができた。空港では係員を含めて周りは全員マスクをしていた。
ハワイでは今年5月末に屋外でのマスク着用義務は解除されたが、今でも屋内では原則としてマスクを着用しなければならない。通りを歩いていても多くの人がマスクを着けている。ハワイ大学マノア校では、8月23日から新たなコロナ対策を開始。キャンパスに入るためにはワクチン接種をするか、週ごとのPCR検査の陰性証明を提示しなければならない。それに加えて、専用アプリで日々の健康状態に関するアンケートに答える必要もある。面倒ではあるが、感染防止のための対策が徹底されていることが分かる。
ハワイ州では、昨年の春からこれまでに渡航者への自己隔離、州全域でのロックダウン、外出時のマスク着用の義務化など、さまざまな措置を実施してきた。昨年12月から医療従事者を中心にワクチン接種が開始。ハワイ時間の10月1日現在、ハワイ州のワクチン接種率は1回目を終えた割合が76.1%、2回目を終えた割合は68%だ。屋外での着用義務が終了した5月のマスク着用率も約85%と高かった。
コロナ禍は観光産業や州の税収入などに大きな損害をもたらし、昨年の失業率は一時、20%を超えた。それでも今年の春からは本土の観光客が増加し、観光産業は徐々に息を吹き返すようになった。感染抑制と観光客受け入れの両立を模索している。