最新記事

アメリカ社会

【現地ルポ】リベラル州ハワイ、全米トップクラスのコロナ対策とその反動

2021年10月2日(土)14時30分
阿部 純(ハワイ大学マノア校客員研究員)

州全域でのロックダウンや外出時のマスク着用義務など、厳格なコロナ対策を実施してきた米ハワイ州(写真は2020年4月29日、ワイキキビーチ) Marco Garcia-REUTERS

<新型コロナの流行以来、ロックダウンなど厳格な規制が実施されてきたハワイ州。こうした措置に抗議するデモが行われているが、その目的は「反マスク」でも「反ワクチン」でもないという。ハワイで何が起きているのか>

コロナ禍以前は、日本人観光客で賑わいを見せていたハワイ。伝統的に民主党支持であり、リベラルな風潮が強いとされる。先の大統領選挙でも得票率約64%でバイデンが圧勝。民主党寄りの州ではワクチンの接種率が高い傾向にあり、ハワイ州でもワクチン接種が早いペースで進められてきた。

しかし今、そのハワイがコロナ規制への「抗議デモ」に揺れている。デモの主催団体の一つは「反マスク・反ワクチンが目的ではない」と言っているが、その真意とは──。

ハワイの入念なコロナ対策と新たな規制プログラム

筆者は今年の7月末からホノルルに住み始めた。現在ハワイ大学マノア校に客員研究員として所属している。コロナ禍での入国であったため、出国前には自己隔離免除のためにPCR検査を含む核酸増幅検査を受診し、英語の陰性証明書を取得。また健康状態に関する申告フォームに回答し、QRコードを入手した。ハワイ到着後には、QRコードと陰性証明書を提示することで、やっと外に出ることができた。空港では係員を含めて周りは全員マスクをしていた。

ハワイでは今年5月末に屋外でのマスク着用義務は解除されたが、今でも屋内では原則としてマスクを着用しなければならない。通りを歩いていても多くの人がマスクを着けている。ハワイ大学マノア校では、8月23日から新たなコロナ対策を開始。キャンパスに入るためにはワクチン接種をするか、週ごとのPCR検査の陰性証明を提示しなければならない。それに加えて、専用アプリで日々の健康状態に関するアンケートに答える必要もある。面倒ではあるが、感染防止のための対策が徹底されていることが分かる。

ハワイ州では、昨年の春からこれまでに渡航者への自己隔離、州全域でのロックダウン、外出時のマスク着用の義務化など、さまざまな措置を実施してきた。昨年12月から医療従事者を中心にワクチン接種が開始。ハワイ時間の10月1日現在、ハワイ州のワクチン接種率は1回目を終えた割合が76.1%、2回目を終えた割合は68%だ。屋外での着用義務が終了した5月のマスク着用率も約85%と高かった。

コロナ禍は観光産業や州の税収入などに大きな損害をもたらし、昨年の失業率は一時、20%を超えた。それでも今年の春からは本土の観光客が増加し、観光産業は徐々に息を吹き返すようになった。感染抑制と観光客受け入れの両立を模索している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税、国内企業に痛手なら再生支援の必要も=

ビジネス

現代自、米ディーラーに値上げの可能性を通告 トラン

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ反発、大幅安から切

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、トランプ関税発表控え神経質
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中