小惑星から地球を守れ 探査機の体当たりで軌道変更、NASAが初の実験へ
DART探査機は11月の打ち上げ以降、ファルコン9から放出されると、宇宙空間を10ヶ月ほどフライトする。そして2022年9月下旬、地球から1100万キロのポイントまで迫ったディディモスと落ち合う。
衝突試験の2日前になると探査機は、イタリア宇宙機関(ASI)が提供するキューブサット型観測機「LICIA」を分離する。LICIAは後方からDARTを追い、衝突の様子や結果として生じたクレーターの画像などを撮影する役目を担う。
DART機本体がディモーフォスに衝突する速度は、秒速6.6キロに達する。拳銃の弾丸の20倍ほどの速さだ。衝突後は地上の望遠鏡とレーダーにより、惑星の運動特性の変化が観測される予定だ。衝突による速度の変化はわずか1%ほどだが、結果としてディモーフォスの公転周期は現在の11.92時間から10分程度短くなると見込まれている。
天体の運動を人類が変える
キネティック・インパクタによる惑星防衛は、従来の惑星探査とは違う新しい試みだ。NASAのサイエンティストであるトーマス・スタッドラー氏は、NASAによるポッドキャストのなかで、「私たちは足跡やタイヤ痕などは残してきましたが、天体の運動を人類が変えるのは初めてのことです」と述べている。
米CBSニュースは1998年のSF映画になぞらえ、「NASAが『アルマゲドン』式ミッション開始へ」「次回のNASAのミッションは、SF災害映画のワンシーンにも似ているかもしれない」と報じる。ただ、今回採用するキネティック・インパクタでは小惑星を破壊せず、軌道を逸らすことを目的としている点でやや異なる。
小惑星対策をめぐっては、ジョンズホプキンス大学の研究者らが先日、状況によっては核爆弾による粉砕が有効であるとするシミュレーション結果を発表した。耳慣れない惑星防衛ということばだが、小惑星の飛来は無視できない危険として、複数の手法の研究が進められている。
DART, NASA's First Planetary Defense Test Mission