最新記事

温暖化

65歳以上の熱関連死亡はこの20年で50%以上増加──220以上の医学雑誌が緊急提言

2021年10月7日(木)17時30分
松岡由希子

「地球の気温上昇や自然環境の破壊によって人々の健康はすでに害されている」 REUTERS/Alisha Jucevic

<220以上の医学雑誌は、地球温暖化防止に向けた緊急対策を講じるよう、各国政府や国際機関に求める提言を連名で発表した>

地球温暖化は私たちの健康にも深刻な影響を及ぼしつつある。2021年9月の国連総会や同年11月に英グラスゴーで開催される第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)に先立ち、「ランセット」、「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)」、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」を含む220以上の医学雑誌は、地球温暖化防止に向けた緊急対策を講じるよう、各国政府や国際機関に求める提言を連名で発表した。

高温により、腎臓の機能障害、皮膚悪性腫瘍、熱帯感染症、アレルギーなどが増加

9月6日に「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」で公開されたこの提言は、「地球の気温上昇や自然環境の破壊によって人々の健康はすでに害されている」と警鐘を鳴らす。

65歳以上の熱関連死亡はこの20年で50%以上増加。高温により、脱水症状、腎臓の機能障害、皮膚悪性腫瘍、熱帯感染症、アレルギーなどが増加し、心臓血管および肺の罹患率や死亡率が高まっている。

地球温暖化は、異常気象や土壌の劣化による影響と相まって、農業生産にも影響を及ぼしている。主要作物の収量は1981年以降1.8〜5.6%減少。栄養不良の撲滅への取り組みを妨げ、少数民族や貧しい地域など、社会的弱者に特に深刻な影響をもたらしている。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、現状のままでは、地球の気温が2030年頃に産業革命前比1.5度上昇するおそれがあるという。

地球温暖化防止にもコロナ対策同様の緊急対応が必要だ

今回の提言では「地球の気温が産業革命前比1.5度以上上昇し、生物多様性が減少し続ければ、人々の健康に壊滅的な危害を及ぼすおそれがあり、これを回復することは不可能になってしまう」と懸念を示した。

また、「新型コロナウイルス感染症への対策に世界全体で集中することは必要だが、温室効果ガス排出量の削減のためにコロナ禍が収束するのを待つことはできない」と主張。「多くの政府がコロナ対策に前例のない規模で財政支出を行っているが、地球温暖化防止にも同様の緊急対応が必要だ」と説いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国、和平合意迫るためウクライナに圧力 情報・武器

ビジネス

米FRB、インフレリスクなく「短期的に」利下げ可能

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 9
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中