中台TPP加盟申請は世界情勢の分岐点──日本は選択を誤るな
中国と台湾が加盟申請をしているTPP(CPTPP=TPP11) RODRIGO GARRIDO-REUTERS
中国に続いて台湾もまたTPP加盟申請を正式に表明した。中国は米軍のアフガン撤退を受け勢いづきイランをも味方に付けて勢力圏を増やそうとしている。中台の受け入れ可否は世界情勢を決定する。日本は選択を誤るな。
習近平はなぜこのタイミングを狙ったのか
習近平国家主席は昨年11月にTPP(正確にはCPTPP=TPP11)への加入意向を表明した。正式発表のチャンスを狙っていたと思うが、9月16日に正式に加入申請手続きに入った。
このタイミングを選んだ最大の大きな理由として9月6日のコラム<タリバン勝利の裏に習近平のシナリオーー分岐点は2016年>を挙げることができる。
米軍がアフガニスタンから引き揚げ、アフガニスタンがアメリカによる統治から逃れる日が来るのを、習近平は周到な計画の下で進めていた。
ロシアのプーチン大統領に協力を求め、上海協力機構を最大限に利用した。
こうして米軍のアフガン撤退とタリバン政府樹立に成功し、返す刀でイランを上海協力機構に入れている。9月16日にタジキスタンの首都ドゥシャンベで第21回上海協力機構首脳会議が開催され、それまでオブザーバー国として参加していたイランの正式加盟が認められた。
中国が正式にTPP加盟申請をしたのは、この同じ「9月16日」であることに注目しなければならない。
アフガニスタンのタリバン政府が中国に改めて「一帯一路」加盟確認をしたのは9月2日のことだ。「改めて」と書いたのは、実はアメリカの統治下にあったアフガニスタン傀儡政権もまた、2016年に中国と「一帯一路」協力に関して「備忘録」の形で参加表明していたが、実質を伴っていなかった。したがって実質を伴う形で入りたいとしてタリバン暫定政権は中国に「一帯一路」の継続申請を改めてしたのである。
さて、この二つの出来事から、中国がなぜ9月16日をTPP加盟申請日として選んだかを確認するために、以下の勢力図マップをご覧いただきたい。
まず、アフガニスタンから米軍が撤退したことによって、「一帯一路」がどのようにスムーズにつながり、中国の勢力圏に入っていったかを図表1で示す。
図表1:米軍のアフガン撤退後の「一帯一路」勢力図
(赤:中国/薄い赤:加盟国)
ユーラシア大陸は途切れることなくつながり、「一帯一路」は世界を網羅している。
図表2では、中露を中心とした上海協力機構が次々とメンバー国を増やし、特にイランが加盟したことにより反米色を強くしていることを示している。
図表2:イランが正式メンバーになった後の上海協力機構
(赤:中心となった中露/薄い赤:中露以外の正式メンバー国/
緑:オブザーバー国/紫:対話パートナー/水色:客員参加)
上海協力機構は中国とロシアが中心となって構築した機構なので、中国とロシアを真紅で色分けし国名も入れたが、他の薄い赤のメンバー国の国名を全て入れると煩雑になるので、9月16日に正式に加盟した「イラン」と、本稿の最後に論じる日米豪印4ヵ国が協力するQUAD(クワッド)の中の「インド」の国名だけを書いた。不均一になるかもしれないが、ご理解いただきたい。