バイデンが「中国封じ込め」に本気のわけ
Joe Biden's Stance Against China Is Radically Different From Donald Trump's
多国的枠組みで中国封じ込めを狙うバイデン Evelyn Hockstein-REUTERS
<トランプ時代の敵対政策に比べて協力に転じたと見える部分もあるが、バイデンも実は強硬だ。中国の味方は少なく、アメリカは前進している>
ジョー・バイデンがアメリカの大統領に就任して8カ月。政権交代によりドナルド・トランプ前大統領の下での敵対的な関係の見直しが進むのではという中国側の当初の期待にも関わらず、米中の緊張は続いている。
両国政府はトランプ時代より対話はするようになっているが、議論はちぐはぐだ。どちらも自国の基本原則を主張するばかりで、相手の言うことにはまるで耳を傾けない。
中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、トランプ政権が中国(特に共産党)を狙い撃ちにして行ったさまざまな報復措置が撤廃されるのを待っている。一方でバイデンが静かに振りかざそうとしているのは、民主主義VS.専制主義の存在を賭けた戦い(とバイデンが言っているもの)のためのアメリカの力だ。
貿易戦争や新型コロナウイルス問題をめぐるトランプ流の攻撃的なレトリックこそ姿を消したかも知れないが、バイデンの穏やかなトーンの陰には深い計算がある。両方を並べてみれば、「中国封じ込め理論」がこれまでになく現実味を持って見えてくるはずだ。これまでの軍事的な対抗関係に加え、経済やテクノロジー、外交の分野に加えてグローバルヘルスの分野のリーダーの座を巡っても、中国はアメリカとの厳しい競争に直面している。
「自由世界VS.中国」の構図
アメリカ政府は中国に対抗してワクチン外交を展開し、途上国に対する中国の影響力を弱めようとしている。また、国際的な協力関係の構築を通して中国にたびたび挑戦を仕掛け、中国はそのたびに「冷戦メンタリティー」だといらだちを示した。
中国の当局者、そして特に政府系の報道機関は、アメリカが失敗するとそれをことさらに取り上げる傾向がある。だが、アメリカの信用をおとしめようとする彼らの主張が世界の多くの人々の耳に届いているという証拠はほとんどない。さらに重要なのは、アメリカはゆっくりとではあるが前進を続けていること、そして既存の国際秩序を守ろうとするアメリカ主導の努力の勢いが衰える気配を見せていないことだ。
「トランプは中国との競争を、主にアメリカ対中華人民共和国という枠組みだけで見ていた。一方でバイデンは物事を、自由世界全体(リーダーはアメリカ)対中国というプリズムを通して見ている」と語るのは、コンサルタント会社パーク・ストラテジーズのショーン・キング上級副社長だ。
米中のライバル関係はもはや所与の条件だとキングは言う。「それにバイデンはできるだけ多くの国々や人を自分の側に付けたいと思っているようだ」