最新記事

日本社会

日本の大学生の休学率が、他国と比較して桁違いに低い理由

2021年9月22日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
ボランティアの学生

世界規模の課題の解決に寄与したいと思う日本の学生も多いはず franckreporter/iStock.

<「モラトリアム」期間である学生時代に、留学や外国でのボランティアなどで学び(体験)の機会を持つことは重要だが>

休学とは、学校に在籍する生徒や学生が、一定期間授業を受けない状態にあることを言う。義務教育諸学校の学齢児童・生徒は、法律上休学は認められない。長期間休まなければならない事由がある場合は、就学義務の猶予ないしは免除の対象となる(学校教育法18条)。だが高校生や大学生はこの限りでなく、大学での休学は「教授会の議を経て、学長が定める」とされている(同法施行規則144条)。

2020年5月時点で見ると、休学している大学生は2万8486人で、大学生全体のおよそ1.0%となる(文科省『学校基本調査』)。これだけでは何とも言えないが、タテの時系列比較、ヨコの国際比較をすると、日本の大学生、もっと広くは青年期の特徴(課題)が見えてくる。

まずは時系列比較で、<図1>は大学生の休学者数の推移をたどったものだ。1970年から2020年までの半世紀のカーブを描いている。

data210922-chart01.png

大学の休学者は1980年代半ばから上昇し、東日本大震災が起きた2011年には3万人を超えた。その後、数年はフラットで、2019年に過去最多となり翌年にはまた減った。2020年は感染症の拡大で、仲間と会えない孤独や経済苦が広がったことから休学も増えたかと思いきや、現実には減っている。これは、この年から始まった高等教育の無償化政策の効果だろう。

長期的に見て、大学生の休学は増加の傾向だ(学生数で割った出現率でみても同じ)。これをもって、学業不適応やアパシー(意欲の低下)に陥る学生が増えている、小・中学校の不登校と同じ意味の指標と読むべきだ、という声がある。大学進学率は年々上昇し、今や50%(同世代の半数)を越えていることから、そういう見方も当たっているかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=ダウ約300ドル安・ナスダ

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中