最新記事

フィリピン

比ポストドゥテルテはプロボクサー? パッキャオ出馬で最大与党の派閥抗争が浮き彫りに

2021年9月20日(月)19時45分
大塚智彦
マニー・パッキャオ

「PDPラバン」の一部派閥から大統領選候補として指名されたマニー・パッキャオ上院議員。写真は8月21日、ラスベガスでWBA世界ウェルター級の王者ヨルデニス・ウガスと対戦したときのもの。USA TODAY USPW - REUTERS

<国家元首を擁する与党内で、派閥争いが繰り広げられるのはどこの国でも同じようで──>

フィリピンの最大与党「PDPラバン」の一部派閥は9月19日、開催した会議で同党所属のプロボクサー、マニー・パッキャオ上院議員を2022年5月に実施される次期大統領選挙の大統領候補として指名。パッキャオ氏が指名を受諾したことで同党の正副大統領候補が出揃った。

「PDPラバン」は9月8日にルソン島中部パンパンガ州サンフェルナンド市で開催した全国党大会でドゥテルテ大統領を支持する主流派閥が彼を副大統領候補に指名し、本人もこの指名を受諾した。一方でこのとき大統領候補として指名されたクリストファー・ボン・ゴー上院議員は指名を辞退。同党の正式な大統領候補は未定の状態が続いていた。

そうした「大統領候補者空席」の状況の中で開催された今回の一部会派によるパッキャオ氏の大統領候補指名・受諾に対し、てドゥテルテ大統領を支持する主流派閥は反発を強めている。そのため今後党内抗争が激化する可能性が高く、政治的混迷が大統領選に影響を与えそうな気配となっている。

反目しあう党内派閥の争い激化

19日の「PDPラバン」一部会派によるパッキャオ氏大統領候補指名は地元マスコミで大きく伝えらえたが、同時にドゥテルテ大統領を支持する主流派閥は「パッキャオ氏の指名は党の総意を反映していない」と批判。逆にパッキャオ氏を指名した派閥は「ドゥテルテ大統領を副大統領に指名した一派による党の乗っ取りは許さない、党は一つでありわれわれは戦う」と相手を非難。それぞれ相手の候補者を認めない立場を明らかにし、対立が激しくなっている。

最大与党「PDPラバン」内部では以前からドゥテルテ大統領支持派とパッキャオ上院議員支持派による主導権争いがあり、必ずしも一枚岩ではなかった。

そうした状況でドゥテルテ大統領の側近であるボン・ゴー上院議員が大統領候補指名を拒絶したことで、大統領候補の指名が党内で再調整されることになり、パッキャオ氏指名の動きが高まり、支持派が一気に指名に持ち込んだ結果だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウ大統領府長官の辞任、深刻な政治危機を反映=クレム

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ大統領と電話会談 米での会談

ワールド

ネクスペリアに離脱の動きと非難、中国の親会社 供給

ビジネス

米国株式市場=5営業日続伸、感謝祭明けで薄商い イ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中