最新記事

中国

河野太郎に好意的な中国──なぜなら「河野談話」否定せず

2021年9月12日(日)19時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
河野太郎

2021自民党総裁選に出馬表明した河野太郎氏(9月10日)Issei Kato-REUTERS

河野太郎氏は女系天皇や原発で「豹変」したと日本では報道されているが、中国では「河野談話」を否定しなかったことに注目し、非常に好意的だ。その実態と、日本に及ぼす影響に関して考察する。

日本の報道:脱原発と女系天皇容認を封印

自民党の河野太郎氏(行政・規制改革大臣)が9月10日、自民党総裁選への立候補を正式に表明した。

9年前から自身のブログで訴えてきた「脱原発」エネルギー政策については、持論を封印して、原発再稼働を当面容認する考えを示し、「安全が確認された原発を当面は再稼働していくことが現実的だ」と述べた。

また河野氏はこれまで、母方で天皇家と血のつながる「女系天皇」を容認する考えを示してきたが、これも「(政府の)有識者会議の結果を尊重していくということに私として全く異論はございません」と述べて、世間を驚かせた。

いずれも総裁の玉座を手にするためには、政権与党内の空気や安倍前首相の顔色を窺い、政治信念まで曲げるのかと、日本のメディアの批判と国民の声は厳しい。

たとえば9月10日の毎日新聞<皇位継承、原発で河野氏「持論封印」 保守系への配慮、もろ刃の剣か>や9月11日の時事通信社<河野氏、懸念払拭へ持論封印 脱原発、女系天皇 支持拡大狙い、ジレンマも>およびそのコメント、あるいは激しいところでは、同じく9月11日の日刊ゲンダイ<河野太郎氏「総裁選」出馬会見で手柄自慢も発言ブレブレ...ゴマカシとスリ寄りで評判散々>など枚挙にいとまがない。中には河野氏のパワハラ怒声録音を暴露した文春オンライン報道などもあるが、全般的に見て、日本の報道として特徴的なのは、「脱原発」と「女系天皇」問題に焦点が当たっている。

中国の報道:「親中派」と「河野談話」に焦点

ところが中国の報道は、河野氏がこれまで「親中派」であっただけでなく(参照:9月9日のコラム<日本の自民党次期総裁候補を中国はどう見ているか?>)、今般の出馬表明で河野氏が「河野談話」を否定しなかったことに焦点を当てている。

同じ人物に関して、日本と中国では、「見えている景色」が全く違うのだ。

たとえば9月11日の中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」電子版環球網は<河野太郎氏が自民党総裁選への出馬を表明、日本のメディアは4ヶ月連続で世論をリードしていると報道>という見出しで、河野氏を絶賛している。

そもそも河野氏を紹介する見出しに「4ヶ月連続で世論をリードしている」という言葉を使うことからして、「応援ムード」にスイッチが入っていることをうかがわせる。

なぜなのかは、その記事が何に焦点を当てているかを見れば一目瞭然だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米国、ベネズエラへの新たな作戦

ワールド

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中