最新記事

東南アジア

ミャンマー民主派が軍に宣戦布告 各地で攻撃開始、実質的な「内戦状態」に

2021年9月8日(水)17時55分
大塚智彦
ミャンマー民主派と軍の戦闘

CNA Insider / YouTube

<国軍によるクーデターから7カ月、民主派の反撃はこの国に平穏を取り戻すのか?>

軍政による強権的弾圧が続くミャンマーで7日、民主勢力側が国民に対して武器を持って対抗することを正式に呼びかけた。また市民には食料品や医薬品の確保を求めるなど実質的な「宣戦布告」を行ったことが明らかになった。

現地からの報道によると、7日にオンラインで会見した「国家統一政府(NUG)」のドゥワ・ラシ・ラー氏は国民に「軍の施設を攻撃せよ」などと軍政と戦うことを正式に求めた。同氏は2月1日のミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍によるクーデター後に民主化勢力が対抗して組織したNUGの副大統領を務めている。

NUGはすでに5月5日に市民による武装組織「国民防衛隊(PDF)」を傘下に収め、軍に対し「目には目を」として市民の武装闘争を支持する姿勢を明らかにしている。

今回の発表は、このPDFなどによる武装抵抗を全土に拡大して、軍政への正面からの対決姿勢を打ち出したものとして注目されている。

ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると市民の犠牲者はこれまで1000人以上となっている。

「これは市民の正当な革命だ」

ラー副大統領は発表の中で「国民は軍事テロリスト支配への戦いに参加することが求められている。これは市民による正当な革命(戦い)である」と述べた。そのうえで武装市民に対して軍の施設などへの攻撃を指示した。

ネットなどで報道を続ける地元メディアは7日夜から8日にかけて各地で軍の通信施設などが爆破される映像や画像を次々とアップしており、すでに各地でラー副大統領の求めに応じた「攻撃」が開始されたことをうかがわせている。

ミャンマーではすでに各地で組織されたPDFが、軍兵士や警察官、軍政支持者、市民の中に紛れ込んでいる「ダラン(密告者)」を襲撃。国境周辺部で軍政と対決している少数民族武装勢力による軍との戦いとともにすでに実質的には「内戦状態」になっている。

8月14日にはヤンゴンの環状線の列車内で警察官6人が銃撃され、4人が死亡する事件も起きており、治安状況は悪化していた。

市民には食料、医薬品確保を指示

ラー副大統領はまた一般市民に対して「食料や医薬品を備蓄し、外出を控えて武装市民の戦いを支持するよう」にも求めた。

これに対し8日にはヤンゴン市内などの一部商店には市民が詰めかけて食料品などを大量に買いだめする様子がみられたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中