最新記事

オーストラリア

「涙が溢れそうに」 ロックダウンで叔母の葬儀逃した羊飼い、羊で追悼メッセージ 豪

2021年9月6日(月)16時30分
青葉やまと

羊で叔母への最後のメッセージを送った Guardian News-YouTube

<オーストラリアの厳しい移動制限により、葬儀で別れを告げることは不可能に。しかし、羊飼いは諦めなかった>

オーストラリアの田舎町で農家として暮らす29歳のベン・ジャクソン青年は、愛する叔母をがんで亡くした。2年間の闘病生活を立派に闘った彼女に最後の別れを告げたいと考えたが、どうやら叶いそうにない。

オーストラリアでは厳しい感染対策が敷かれ、州をまたぐ移動は大きく制限されている。葬儀が執り行われるブリスベンはクイーンズランド州に位置し、ジャクソン氏が住むニューサウスウェールズ州からの入境を禁じていた。

しかし、青年は諦めなかった。羊飼いという自分らしさを最大限に活かした方法で、最後のメッセージを叔母に伝えようとジャクソン氏は考える。青年の頭のなかにあったのは、広大な牧場、羊、そしてドローンだ。気まぐれな羊の「協力」を得ることは難しかったが、ジャクソン氏は苦心の末アイデアを実現し、動画に収めることに成功する。

完成した動画は上空からドローンで牧場を捉えたもので、はじめは羊の群れが漫然と大地に広がっている。しかし、次第に羊たちは規則性をもって並びはじめ、広大な牧草地のうえにみるみる線が描き出されてゆく。南半球の冬が生んだ褐色の枯れ草のうえに鮮やかな白のラインが浮かび上がり、やがて世界で最も短いメッセージが出現するという趣向だ。

「見るたびに涙が」 海外ニュースやSNSで話題に

動画はオーストラリア東部、ニューサウスウェールズ州のガイラの町で撮影された。シドニーとブリスベンのちょうど中ほどにある、人口2000人ほどの小さな町だ。牧場で撮影された動画は400キロ離れた葬儀の場に届けられ、親族と参列者の胸を打ったという。

Australian farmer pays tribute to his aunt with help of sheep


動画はオンラインでも公開され、SNSで大きな反響を呼んでいる。「叔母さんへのなんと素晴らしい尊敬の証だろう」「大好きで、見るたびに涙が溢れる」などのコメントが絶えない。各種メディアの注目も集めており、英ガーディアン紙やBBCなどが相次いで取り上げている。フランスの国際ニュース局『フランス24』は、「飼料の山を戦略的に配置」したアートであり「真のクリエイティビティだ」と称えた。

オーストラリアの朝のトーク番組『モーニング10』でも取り上げられ、司会者は「非常に感動的、そして心からの誠実さがあり、典型的にオーストラリアらしい方法」で撮られた惜別メッセージだと紹介している。ジャクソン青年は同番組に中継で出演し、「葬儀に行けず無力感を感じていた」ことから動画を思い立ったと説明した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

与党「地滑り的勝利」で高市トレード再開へ、日経6万

ワールド

高市首相、消費減税「やった方がいいと確信」 改憲は

ワールド

自民単独300議席超、「絶対安定多数」上回る 維新

ビジネス

自民大勝でも「放漫財政にならない」=片山財務相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 6
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 9
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中