アフガニスタンはなぜ混迷を続けるのか、その元凶を探る
THE ROOT OF THE CHAOS
西側世界は、イスラム・テロと聞くと居ても立ってもいられない。移民イスラム教徒との摩擦や、実際に発生するテロ攻撃事件の影響で、多くの欧州諸国では、イスラモフォビア(恐怖症)に基づく合理的とはいえない政策や政治が行われて物議を醸している。2015年1月に起きたフランスの風刺週刊紙シャルリ・エブド襲撃事件で見られた対応などがそうだ。
東京オリンピックの閉会式で五輪旗を受け継いだパリの女性市長アンヌ・イダルゴは、アフガニスタンの北東にあるパンジシール渓谷で唯一タリバンに抵抗しているアフマド・マスードを支援せよと訴えた。その理由は、「若い女性を強制的に結婚させるなどということは人道的確信を持って拒否する」「テロリストはすぐにもタリバンの下に安全なアジトを見つけるだろう」といったものだった。
しかし、考えてみてほしい。もし彼女の言うとおりに内戦を支援するなら、アフガニスタンの男女はさらなる苦しみに投げ込まれ、ISなどのテロリストはより活動がしやすくなるだろう。
また、20年前にブッシュ米政権と共にイギリスを対アフガン戦争へと導いたトニー・ブレア元首相は、「アフガニスタンの人々を見捨ててはならない」と、自身が主宰するシンクタンクのウェブサイトを通じて長文の声明文を発表した。
「(撤退は)包括的な戦略ではなく『政治的』に決められた。(中略)『永遠の戦争を終わらせる』という不器用な政治的スローガンに従ってしまった」と、バイデン政権の身勝手さを厳しく追及する内容だ。この中でブレアは、「西側の政策決定者たちは、『イスラム過激主義』と呼ぶことにさえ合意していないが、もしそれが戦略的な挑戦であると認識できていたなら、アフガニスタンからの撤退という決定は決してしなかっただろう」と、20年前に決断した自身の選択を擁護するだけでなく、新たな介入の是非にまで議論を広げるのであった。
ブレアはBBCの取材に対して、「アフガン経済規模は2001年当時に比べて3倍になり、今年は女性5万人を含む20万人が大学に通っていた」と「民主社会」の崩壊を悔しがった。だが、彼が助けよとアピールした「アフガニスタン人」とは、どのような人たちのことなのであろうか。
ここに、19世紀から続くイギリスの分断統治の典型を見る。アフガニスタン人とは、タリバンに代表されているパシュトゥン人のことであるということを知れば、タリバンは欧米式の大学教育から少しも利益を得ていない。
ブレアは、このことをどう説明するのであろうか。
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