AUKUSは対中戦略に有効か?──原潜完成は2040年、自民党総裁候補の見解
米英豪のAUKUSに関するオンライン会談におけるバイデン大統領(9月15日) Tom Brenner-REUTERS
バイデンが強引に成立させた米英豪軍事同盟AUKUSにより米・EU間に亀裂が走っているだけでなく、原潜が完成する2040年には中国のGDPはアメリカを抜いている。豪・EUの貿易協定も破談になりそうで中国を喜ばせている。
日本の自民党総裁候補の原潜に関する見解も分析したい。
オーストラリアで製造する原潜の完成時期は2040年頃──そのとき中国のGDPはアメリカを抜いている
9月15日に予告なしに発表された米英豪3ヵ国から成る軍事同盟AUKUS(オーカス)により、オーストラリアがそれまでフランスと約束していた潜水艦製造計画が一方的に破棄され、米英に乗り換えたことによってフランスを激怒させた。
そうでなくともバイデン大統領の拙速なアフガニスタンからの米軍撤退の仕方に失望していたEUがフランス側に立ったため、AUKUSの誕生によってEUとアメリカの間に亀裂が走り、中国を喜ばせていることは9月24日のコラム<中台TPP加盟申請は世界情勢の分岐点――日本は選択を誤るな>に書いた通りだ。
中国が喜んでいるのはそれだけではない。
実は米英の技術提供の下でオーストラリアで製造される潜水艦は原子力潜水艦で完成は2040年になってしまうからだ。
日本ではあまり報道されていないが、9月16日のAP通信が"Australia: Strategic shifts led it to acquire nuclear subs"(オーストラリア:戦略的転換により原子力潜水艦を保有することになった)というタイトルで、オーストラリアのモリソン首相の言葉として伝えている。
報道によればモリソン首相は「オーストラリアの都市アデレードに建設される予定の原子力潜水艦の1号機は、2040年までには建造されるだろうと期待している」と語ったという。
フランスの防衛当局者も「オーストラリアには悪いニュースだ」として「完成は良くても2040年まで待たなければならない」とツイートしている。
2040年と言えば、中国のGDPはとっくにアメリカを抜いていると思われる時期ではないか。
ひところ、中国のGDPは2035年にはアメリカを抜くとIMFにより推測されていたが、最近ではイギリスのシンクタンクが2028年までに抜くという予測データを示しているくらいだ。
その時期が2028年だろうと2035年だろうと、少なくとも2040年には(もし中国が崩壊していなければ)アメリカを追い越しているのは確かだろう。ということは、それだけの経費を軍事産業にも注ぐことができているということになるので、軍事力においてもアメリカより勝っていることになる。
そのような時期に完成される原子力潜水艦が、対中戦略に有効だと考えるのには、無理があるだろう。