最新記事

アフガニスタン

米軍のバグラム空軍基地放棄がテロを世界に拡散させる

2021年8月30日(月)11時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
パグラム空軍基地

米軍が撤収した後のパグラム空軍基地を占拠したアフガン兵(7月2日、今はタリバンに奪われた) Mohammad Ismail-REUTERS

中国ではタリバンの治安に関心が集まっており、米軍がバグラム基地を放棄したことがテロ拡散を招いたとする米共和党議員やペンタゴンの発言に基づいて報道している。英語の原文(日本語版を含む)にも当たって真相を解明したい。

米軍によるバグラム空軍基地放棄に関する中国での報道

8月29日のお昼のニュースで、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTV国際は、

<米共和党員は、カブール空港での爆発事件に関してバイデンに責任があると追求した>というテーマで特集番組を組んだ。

また中国政府の通信社である新華社の電子版・新華網は、<空軍基地放棄が悲劇を生んだのか?バイデンは「アフガン撤退ロードマップには如何なる問題もない」と発言>という見出しで、米共和党議員によるバイデンの撤退指示の稚拙さと無責任さに対する非難を報道している。

二つとも米共和党議員としてクルーズ議員など数名の議員の名前を挙げている。

他にもさまざまな報道があるが、それらをまとめると、概ね以下のようなことを中国では報道している。なお、カブールの近くにあるバグラム空軍基地はアフガニスタンにおける最大の米軍基地で、米軍が反テロ活動を行う際の拠点となり、数千人の犯罪者を収容することができる刑務所を付設している。

1.バグラム空軍基地放棄は災難性の政治決定だ。絶対に最後まで放棄すべきではなかった。あれを放棄したからこそタリバンが勝利してしまったのであり、今回のようなテロ事件が起きたのだ。アメリカ人のアフガニスタンからの避難に関しても、バグラム空軍基地ならセキュリティが高いので、テロの犯人が勝手に近づくこともできなかったはずだ。

2.バイデン大統領はテロ事件があった26日の記者会見で、なぜバグラム空軍基地を放棄したのかという記者の質問に対して「撤退の組織化についてアフガニスタンのすべての主要軍司令官と国防総省の意見を聞いた結果、『バグラムはあまり役に立たず、カブール空港に集中する方がはるかに賢明だ』という結論に達し、私はそのアドバイスに従った」と答えたが、その責任は償いきれないほど重い。

3.米軍は7月1日の真夜中(から7月2日にかけて)、誰にも知らせずに突如バグラム空軍基地から撤退した。アフガン政府軍は当時、引き渡しはおろか、米軍が基地から撤退することも知らされていなかったという。

4.タリバンは8月15日にバグラム空軍基地を占拠し、カブールを占領した。米軍がいなくなっていたので、アフガン政府軍には戦闘意欲はなく、付設する刑務所も含めて空軍基地はあっさりとタリバンの手に渡った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 2人負

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が

ビジネス

独VW、リストラ策巡り3回目の労使交渉 合意なけれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中