最新記事
韓国

韓国の繁華街、外国人旅行者に依存してきた明洞は一人負け

2021年8月19日(木)18時00分
佐々木和義

人が消えた明洞の路地 撮影:佐々木和義

<長引く新型コロナの影響で韓国の繁華街の中でも明暗が分かれている。弘大や梨泰院などは人々がわずかながら戻るなか、韓国最大の繁華街である明洞は客離れが続いている......>

新型コロナウイルス感染症の長期化で、韓国の繁華街の中でも明暗が分かれている。韓国不動産院が発表した「商業用不動産賃貸動向」による21年度第2四半期の韓国全土の中大規模店空室率は13.1%で、第1四半期と比べて0.1%増加した。全国の小規模商店空室率は6.4%、首都ソウルは6.5%で前期と変わりない。

ソウル・弘大(ホンデ)の小規模商店空室率は22.6%、梨泰院(イテウォン)は31.9%と平均を大きく上回るが前期から変化はなく、一方、第1四半期に38.3%の空室率を記録した明洞は43.3%まで上昇した。

弘大や梨泰院など、ウイズ・コロナに慣れた人々がわずかながら戻るなか、韓国最大の繁華街である明洞は客離れが続いている。

徐々に人々が戻る弘大や梨泰院

梨泰院は20年5月、大きく落ち込んだ。同月9日、梨泰院のクラブで新型コロナウイルスの集団感染が発生した。感染者や濃厚接触者が、複数の店を訪問していたことが判明すると、市民が梨泰院を避けるようになり、ゴーストタウンの様相となった。筆者は梨泰院駅を通る地下鉄を頻繁に利用するが、当時、梨泰院駅の乗降客は1人もなく、路線自体の利用者も少なくなっていた。

梨泰院は外国人が多い街である。旧日本軍の龍山基地を引き継いだ在韓米軍人の歓楽街として発展した経緯から、怖い街と考える韓国人は少なくないが、サムスンが美術館を建設し、インターパークがミュージカル劇場を建てるなど、治安に対する不安が薄れて若い女性も増えている。

各国の大使館が集中する大使館通りや韓国初のイスラム教モスクもある韓国随一の外国人街で、世界各国の料理店や雑貨店が並んでいる。新型コロナの影響で、海外に行くことが難しい今、母国の味を懐かしむ在韓外国人や本場の味を求める韓国人が少しずつ戻っている。

弘大は、若者の街として知られている。美術系大学として有名な弘益大学のキャンパスがあり、卒業生らがデザインやアイデアを発信する街として発達した。

個性的なショップやカフェが立ち並び、いまは新型コロナの影響で規制されているが、若者たちの創作活動や路上パフォーマンスが連日のように行われてきた。物価が安い街ではないが、大学を卒業してまもない20代に加えて、若者文化や新進トレンドに接したい人々が集まっている。

外国人旅行者に依存する明洞の凋落

一方、明洞の主要客は、外国人旅行者だ。多くの店が韓国語と日本語、中国語、英語の看板を設置しており、日本語話者や中国人話者を常駐させる店も多い。ソウル市が派遣する日本語、中国語、英語の通訳ガイドが街角に立ち、域内を巡回する警察官も翻訳アプリをインストールしたタブレット端末を携行する。明洞固有のアイテムは、外国人旅行者に飲食物や商品を売る屋台と足の踏み場がないほどの賑わいだ。

韓国には地方特有の名産はほとんどない。各地で名が知れ渡ったアイテムは必ずといって良いほどソウルに集まり、首都の市民権を得た後、国内各地に広がっていく。明洞は、国内各地が同じようなアイテムで溢れる韓国を凝縮した街でもある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中