最新記事

アフガニスタン

タリバンがアフガニスタンを奪い返す勢い──バイデンは何を読み違えたのか

What Happens If the Taliban Takes Control of Afghanistan?

2021年8月13日(金)17時45分
ジャック・ダットン
進撃続けるタリバン兵

8月12日、制圧したガズニの州都に立つタリバン兵 Taliban Handout/REUTERS

<米軍撤退の方針に変化はなく、タリバンが首都カブールも制圧する事態になれば、アフガン侵攻から20年間の進歩は全て無に帰す>

アフガニスタンの反政府勢力タリバンは8月12日、同国南東部ガズニ州の州都ガズニを制圧した。この1週間でタリバンの手に落ちた州都は、これで10カ所目だ。(注:報道によると、タリバンはその後一夜にして、人口で第2、第3の都市であるカンダハルとヘラートも制圧した)。

同盟諸国の軍がアフガニスタンからの撤退を進めるなか、タリバンは急速に国内の幅広い地域を掌握しつつある。この事態に当局者たちは、タリバンがいずれアフガニスタン全土を掌握する可能性を懸念。その場合、タリバンが最後の「仕上げ」として狙うのが、おそらく首都のカブールだろうと専門家たちは考えている。

シンクタンク「国際危機グループ」のアフガニスタン担当上級分析官であるアンドリュー・ワトキンスは、12日に本誌の取材に電話で応じ、「過去1週間か10日だけを見ても、事態は急速に変化している」と指摘。さらに次のように続けた。

「私を含め多くの人が、軍事情勢やタリバンとアフガニスタン政府の軍事力のバランスを検証した上で、アフガニスタン政府には――武器やテクノロジーがあるとか、空で有利に戦えるなどの理由から――タリバンとの長引く戦いに、あと数年は持ちこたえる能力があると考えていた」

政府軍が意欲を失いつつある

ワトキンスは、アフガニスタンは大きな分かれ目に直面していると指摘。政府軍が、各州の州都を守るために戦う意欲を失いつつあると分析した。タリバンはこれまでに全34州都のうち10の州都を掌握。広さで言えば、アフガニスタン全土の約3分の2を支配下に入れている。

だがワトキンスは、タリバンによるアフガニスタン全土の制圧は、必ずしも「避けられない事態」ではないと言う。より小規模な地域を制圧したのと同じやり方で、カブールを制圧しようとするのは難しいと指摘した。

「大規模な要塞であるカブールがすぐに陥落するとは限らない」と彼は述べ、こう続けた。「カブールで(そのほかの地域と同じような)市街戦を展開するのは難しい。都市部は迷路のように入り組んでいるところや、住宅街が無秩序に広がっているところがある。通りから通りへと移動しながら戦い、最終的に市全体を制圧しようとするのは、ひどく骨の折れる作業になる」

アメリカは2001年の9・11同時テロの後、アフガニスタンに侵攻した。以降、現地で米軍主導の軍事作戦を展開してきたが、既にほぼ全ての米部隊がアフガニスタンから撤退。8月末には最後の部隊が引き揚げ、撤退を完了させる見通しだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中