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ゼマン監督 LARRY BUSACCA/GETTY IMAGES

たった一人で、誰にも知られず死んでいくのは耐えられないと思った人もいるよね。いずれにせよ、私は決めた。クジラと私たちの関係を問い詰め、それがどう変わってきたか、そして今なぜ私たちがこんなにクジラを愛するのかを探ってやろうと。

クジラの歌については分からないことだらけだ。そうなると犯罪実録ものを手掛けてきた私の本能に火が付く。よし、そこに伝説のクジラがいるならば探してやろう。大海原にミステリーがあるなら、そいつを解き明かそう。まあ、そう思ったわけだ。

ちなみに地上の私たちは視覚に頼って生きているが、海中の生物にとっては聴覚が全て。いくら目を凝らしても海面には何もいないが、海中には多彩な生き物がいる。彼らは、光ではなく音を頼りに生きている。そうだとすれば、クジラのように知的な動物は、音に対して何か感情的な反応をしている可能性もある。

――この映画を見た人には何を期待する?

第1に、クジラの歌がどんなに素晴らしいかを知ってほしい。生物音響学者のロジャー・ペインがアルバム『ザトウクジラの歌』を出したのは1970年だが、当時の人たちはその神秘の歌声に心を奪われ、こんな「天使の歌声」を持つ動物を殺してはいけないと思った。それが今の地球環境保護の運動につながっている。

人間は地球の支配者ではないと、いま一度みんなで確認すべきだ。私たちは最強の種でも、唯一の種でもない。膨大な数の種の1つにすぎない。

あのクジラをやたら擬人化して、大変な孤独を感じていると決め付けるのに問題があるのは承知している。でも、今は海と海の生き物に共感し、守ってやることが必要だと思う。今ならまだ守れるし、世界を変えられる。

この映画のテーマは「聞く」ということだ。私たちは互いに耳を傾け、互いにつながらなければいけない。だから海の声、自然の声に耳を傾けよう。掘り返して見つけ出したい謎もたくさんあるけれど、今は一休みして、自然の声に耳を傾けるのがいい。

――あのクジラが本当に「孤独」を感じていたかどうか、科学者の見解は割れている。いろんな議論があるし、それが当然だと思う。

70年代には、誰もが直感的に、動物にも感情はあると信じていた。でも今は、それを裏付ける科学的な証拠が積み上げられている。群れの1頭が死ぬと、仲間のクジラが悲しそうな行動を見せるという報告もある。

でも、「52ヘルツのクジラ」が孤独をどう感じていたかは知る由もない。そもそも孤独とは何か。悲しいことか、崇高なことか。この映画が、そんなことを考えるきっかけになればいいと思う。

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